DARIO CARNOVALE
まだまだ未知数
まだまだこれからのプレイヤーという感じがする
"PENSIERI NOTTURNI"
DARIO CARNOVALE(p), SIMONE SERAFINI(b), LUCA COLUSSI(ds)
2007年1月 ライヴ録音 (COMAR 23 : CD 0207)

このアルバム、謳い文句は「STEFANO BOLLANI以来の衝撃」というのだから、BOLLANIファンとしては買わないわけにはいかないでしょう。
このDARIO CARNOVALEは1979年生まれのシチリア出身。30歳を超えたところだ。ENRICO RAVAの秘蔵っ子で各地のコンテストを総なめにする期待の新人だという。ジャズの世界ではコンテストで優勝したとか準優勝だったというのは売る側の論理で、聴く側の論理ではないと僕は思っている。要は、CDから流れ出てくる音楽が良いか悪いか・・・それだけだ。
ライヴ録音ということで各曲、長尺である。そして、全ての曲がDARIOのオリジナル。

@"SONG FOR ELENA"
 リリカルなワルツで始まる。おおっと、ベースの増幅が強いね。ムワーっとした締まりのない音色だ。DARIOのピアノは手数が多めでテンションも高めだ。指が良く動く分、饒舌だ。テクニックはあるみたい。いきなり長尺の9分41秒。これを長いと感じてしまうあたり、まだまだといえるかも知れない。
A"PENSIERI NOTTURNI" 緊迫感のあるDARIOのオリジナル。途中に増幅で間延びしたベース・ソロが入るが、これが興醒め。タッチ強めでガシガシ弾きまくるDARIOのピアノには勢いがあるね。これに歌心が加わってくると、相当なプレイヤーになるかも。ドラムスとのコンビネーションは良さそうだ。兎に角、音の洪水に圧倒される。
B"MONK LIGHT" MONK的テーマが特徴の単純明快なブルース。ハイテンションなプレイにブガブガしたベース音、まるでエレキ・ベースのような音色が水を差す。これがアコースティックな硬く引き締まった音色なら緊迫感が更に醸成されていただろう。惜しいねえ!
C"YOUR LOVELY SMILE" 祖父に捧げたというバラード。美しいテーマ、美しいプレイにもっと強い躍動感と昂揚感があれば最高だった。
D"RAVA'S TANGO" ここでいうRAVA'SとはENRICO RAVAを差しているのだろう。何しろ、ENRICO RAVAの秘蔵っ子というくらいだから。ここではメリハリの利いた奔放で闊達な演奏を繰り広げている。
E"DARIUS" DARIOはなかなかのテクニシャン!前半のピアノ・ソロはこのアルバムの聴かせどころで、これだったら全編ピアノ・ソロのほうが面白いのではないかと思ってしまう。4分経過頃から4ビートを刻みだす。このときにベースが左手指で弦を弾くのが散見されるが、これがしつこい印象を与える。
F"BONAGIA" 美しいバラード演奏からアブストラクトなインタープレイにシフトしていく。そして、多ビートの展開へと変幻自在に変化していくあたり、面白い。

このDARIO CARNOVALE、荒削りだけど才能豊かなピアニストだということは間違いないだろう。しかし、「STEFANO BOLLANI以来の衝撃」というのは言いすぎではないか。BOLLANI(JAZZ批評 210.264.)とは歌心という点と引き出しの多さで遠く及ばない。それと饒舌多弁で息をもつかせないプレイが多い。これに適宜、「間」を持てるようになればひと皮もふた皮も剥けるだろう。まだまだ未知数。まだまだこれからのプレイヤーという感じがする。
このアルバム、ライブ録音でプレイヤーのテンションが高め、加えて、饒舌多弁だから少々喧しい感じがする。ドラムスとの相性は良さそうなので、次はベーシストを替えたトリオでのスタジオ録音盤を聴いてみたいと思った。   (2010.10.26)

試聴サイト : http://www.dariocarnovale.it/audio.html




独断的JAZZ批評 658.