STEVE KOVEN
ジャズ初心者からベテランまで幅広く楽しんでいただけるアルバムだと思う
"ALONE TOGETHER"
STEVE KOVEN(p), ROB CLUTTON(b), ANTHONY MICHELLI(ds)
2010年3月 スタジオ録音 (BUNGALOW RECORDS : SKT008)


STEVE KOVENはカナダのトロントを拠点として活躍するピアニスト。同じメンバーによるピアノ・トリオ盤は既に5枚リリースしており、これが6枚目に当たる。当HPでは、今までに2枚紹介している。1枚が2002年録音の"LIFETIME"(JAZZ批評 560.)で、もう1枚が2006年録音の"RESURGENCE"(JAZZ批評 561.)だ。前者が星5つ、後者が星4.5だった。調べてみると、2000年のアルバムからこのメンバーで固定しているようで息はピッタリだ。

@"ALONE TOGETHER" 
有名なスタンダード・ナンバーも一工夫されているが決して嫌味でない。美しいピアノのイントロで始まり、3者が融合していく。
A"INDIANA" 
一転して、4ビートが心地よく響く陽気なテーマ。天真爛漫な陽気さが良いね。四の五の言わずに指でも鳴らせば最高だ。ベースとブラシの4小節交換を挟んでテーマに戻る。
B"ALL OF YOU" 
C. PORTERの有名曲。
C"SNOWY MAPLE" 
ベースのCLUTTONの書いた曲。牧歌的な匂いのする佳曲。CLUTTONのベースは太くて温かみのある音色でよく歌っている。
D"AIN'T MISBEHAVIN'" 
この曲は、最近ではMAGNUS HJORTHの"SOMEDAY, LIVE IN JAPAN"(JAZZ批評 609.)の中にある、PETTER ELDHとのデュオが印象深い。是非、聞き比べて欲しい演奏だ。ここでは陽気で楽しげな演奏を楽しんでいただける。
E"STRAIGHT NO CHASER" 
こういう泥臭いブルースが挿入されているのは嬉しい。
F"MY SWEET LILY" 
KOVENのオリジナル。可憐なテーマに可憐な演奏。続くCLUTTONのベースが良く歌っている。
G"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" 
これもC. PORTERの曲。スタンダード・ナンバー集とも言えば、PORTERの書いた楽曲は外せない。
H"TWANG TUNE" 
ミディアム・テンポの気だるくて牧歌的な雰囲気のMICHELLIのオリジナル.。この牧歌的な匂いのする演奏がKOVEN TRIOの特徴とも言える。
I"BYE BYE BLACKBIRD"
 KOVEN TRIOの特徴のもうひとつにアレンジの面白さがあげられる。決して、奇を衒ったという印象はない。例えば、先に紹介した"RESURGENCE"の中にある"TAKE THE “A” TRAIN"や"LIFE TIME"の中にある"THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE"や"ALL THE THINGS YOU ARE"などもそうで、いずれも新鮮な味わいを提供してくれた。この"BYE BYE BLACKBIRD"も然り。ありそうでない演奏で楽しませてくれる。

STEVE KOVENというピアニストは、古くはTEDDY WILSONからKEITH JARRETTまでいろいろなスタイルの演奏が出来てしまう人だ。そういう意味ではエンターテイナー的要素を持っている。
このアルバムではメンバーの3人が1曲ずつ持ち寄って、残る7曲はスタンダード・ナンバーが中心。なかなかバライエティに富んだ編成となっているが、その分、アルバムとしての統一感は希薄だ。多少軽めな感じも否めない。まあ、スタンダード集という性格上やむを得ない面もある。ジャズ初心者からベテランまで幅広く楽しんでいただけるアルバムだと思う。
初めてSTEVE KOVENを購入するという方には、密度の濃さという点で、先に紹介した"LIFE TIME"(JAZZ批評 560.)をお勧めしたい。   (2010.09.08)

試聴サイト : http://www.cdbaby.com/cd/koventrio



.

独断的JAZZ批評 649.