STEVE KOVEN
3者のアンサンブルが素晴らしい
技量も確かだし、それぞれの楽器の奏でる音色がいい
"LIFETIME"
STEVE KOVEN(p), ROB CLUTTON(b), ANTHONY MICHELLI(ds)
2002年5月 スタジオ録音 (BUNGALOW RECORDS : SKTCD 40)


カナダ・トロントを拠点として活動するSTEVE KOVENは初登場である。今回、再発盤が廉価な1300円で発売されたのでゲットしてみた。このアルバムを注文して待っている間に、HMVに行く機会があり、2006年録音の"RESURGENCE"を先に試聴してゲットしたのであるが、ここは録音年順に紹介していこう。

@"LIFETIME" 太いベース音と牧歌的(あるいはカントリー風)なピアノ。実に雰囲気のある演奏で、先ずこの曲でリスナーは引き込まれていくだろう。
A"THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE" 
・・・と思えば、今度は8ビートの「昔は良かった」と来たもんだ!心憎いねえ。
B"BAJAN HONK" 
KOVENのオリジナルだが、なかなか印象的ないい曲だ。
C"DON'T FORGET FLOSSIE"
 
D"ALL THE THINGS YOU ARE" この演奏が実に素晴らしい。しんと静まり返った湖面に波紋の輪が広がっていくように心の中に沁み込んでいく。僕はこの演奏に惚れ込んだね。
E"ST. THOMAS" 一転して、S. ROLLINSの名曲を賑やかに楽しくプレイ。このピアニストのカヴァー範囲は凄く広い。何でも出来るプレイヤーでもあるが、器用貧乏というわけでもない。
F
"AFTER YOU'VE GONE" この曲を聴いて、どこかで聴いたことのある演奏だと思った。が、その演奏がなかなか思い出せないで隔靴掻痒の気分だった。そうしたら暫くして、ふと思い出した。この演奏はPETER ROSENDALの"LIVE AT COPENHAGEN JAZZHOUSE"(JAZZ批評 161.)の中にある"WHEN IT'S SLEEPY TIME DOWN SOUTH"に雰囲気が良く似ているのだ。いやあ、洒落ているね。指でも鳴らしながら一杯グイッといけば、これは至福の時間だ。
G"SNAPSHOT" 
CLUTTONのウォーキングがいいね。このベーシスト、なかなかの腕前で音色も実に素晴らしい。こういうベーシストが入っていると演奏がきりりと締まる。
H"YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS"
 言わずと知れたスタンダード一発。3人のアンサンブルも絶妙でバランスも良い。しっかりしたサポートがあるとピアノも思う存分に歌えるというものだ。ここでもCLUTTONの力強いベース・ソロが披露されるが、実に良い音色だ。

このSTEVE KOVENのアルバムは今までに何回もネット上で紹介されていたが、購入するまでには至らなかった。今回、1300円という買い得価格であったのでネット検索してみたら何曲か試聴が出来た。そのURLを下記に記載した。
勿論、仮に1300円でなかったとしてもこのアルバムには5つ星を献上している。KOVENはオール・ラウンド・プレイヤーという感じもするが、広く浅くという感じはしない。特に
@DFにおける「間」の取り方は一級品だろう。そして、これが一番大事だと思うのだが、3者のアンサンブルが素晴らしい。技量も確かだし、それぞれの楽器の奏でる音色がいい。
僕は最近、楽器の持つ音よさというのは非常に大事だと思っている。そこには当然のように録音技術というのも欠かせないのだが、彼らの演奏を生かすも殺すもここにかかっているといっても過言ではないだろう。このアルバム、アコースティックなベース音や切れのあるピアノ音、そして、微細なマレットやスティックのドラミングまでがバランスよく録音されている。
世の中には隠れた名盤がまだまだあるのだなあと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.05.30)

試聴サイト : http://www.stevekoven.com/discography/




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独断的JAZZ批評 560.