TAMIR HENDELMAN
これが真骨頂といってしまえばそれまでだけど、兎に角、音符の数が多い
"DESTINATIONS"
TAMIR HENDELMAN(p), MARCO PANASCIA(b), LEWIS NASH(ds)
2010年2月 スタジオ録音 (RESONANCE RECORDS : RCD-1017)


TAMIR HENDELMANについては2004年録音のJEFF HAMILTON(ds)の"THE BEST THINGS HAPPEN..."(JAZZ批評 214.)で紹介している。「そのうち名を馳せてくる、期待感溢れる新人だ」と書いている。それから6年。今度はHENDELMAN自身がリーダーとなったアルバムだ。
"THE BEST THINGS HAPPEN..."ではJEFF HAMILTONという強烈な個性を持つベテラン・ドラマーのリーダーの下に、HAMILTON色の強い演奏をしていれば良かった。ハード・ドライヴからバラードまで硬軟両様、理屈ぬきに楽しめれば、これぞハミルトン ワールド。たまに聴きたくなる気の抜けるジャズ。
さて、今度はHENDELMAN、自分自身がリーダーだ。果たして、どんな色に染めてくれるのだろうか?

@"WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS" 
兎に角、最初から音符の洪水に溺れそうになる。ノリとしてはOSCAR PETERSONのノリだね。
A"PASSARIM" 
JOBINの手になる曲をボサノバ調で饒舌に歌う。間に挟まれるPANASCIAのベース・ソロは良く歌っている。
B"SOFT WINDS" 
懐かしいなあ!昔、ブルースといえばこの曲あたりが定番だったっけ。これが真骨頂といってしまえばそれまでだけど、兎に角、音符の数が多い。
C"LE TOMBEAU DE COUPERIN" 
確かに指は良く動くね。
D"MY SONG" 
流石にKEITH JARRETTの曲まではPETERSONスタイルでは弾けなかったみたいだ。
E"YOU STEPPED OUT OF A DEAM" 
とめどなく続く音符の嵐。
F"ISRAELI WALTZ" 
HENDELMANのオリジナル。HENDELMANはイスラエル人というから母国に想いを馳せながら書いたのだろう。
G"ANTHROPOLOGY" 
H"BABUSHKA" 
I"ON THE STREET WHERER YOU LIVE" 
この演奏はリラックスした雰囲気で良いね。
J"BQE" 
小曽根 真の曲だという。テクニックのあるピアニストにとっては屁でもないテーマなのかもしれないが、せわしなく目が回るようなテーマだ。結局のところ、HENDELMANにはこういう路線が一番合っているのかもしれない。
K"VALENTINE"
 FRED HERSCHの曲を1曲入れてきたのは意外だった。しかし、しっとり感を期待すると裏切られる。最後までガツガツとせわしない。

なんていうのかなあ?!下手だとは思わないし、間違いなく、テクニック的には上手いのだと思うのだけど、アルバム全体で見ると、なにか上滑りしている感じ。高度なテクニックが邪魔になるといったら良いのだろうか?
たとえば、BRAD MEHLDAUなんかは超絶技巧のピアニストだと思うけど、決して、それを売りにしていない。むしろ、「脳ある鷹は爪を隠す」的であるし、「間」を大事にしている。
その点、HENDELAMANのピアノはがむしゃらだ。HENDELMANにとって、これがRESONANCE REDORDSへの移籍ファースト・アルバムなのだから、ついつい力が入ってしまうのも無理はないかもしれないが・・・。   (2010.09.04)

試聴サイト :  http://music.napster.com/tamir-hendelman%2C-marco-panascia%2C-lewis-nash-music/tracks/13176388#



独断的JAZZ批評 648.