独断的JAZZ批評 634.

BILL CHARLAP
寛いだ夜にアルコールでも傾けながら聴くのに最高だ
1500円でこんなに楽しめるアルバムを手に入れることが出来ることに感謝せねばならないだろう
"I'M OLD FASHIONED"
BILL CHARLAP(p), PETER BERNSTEIN(g), PETER WASHINGTON(b)
2009年12月 スタジオ録音 (VENUS RECORDS : VHCD-1043)


前掲のアルバムに続き今回もビーナス・レコードである。このアルバムも1500円だ。しかも、2009年12月録音で、今月リリースされたバリバリの新譜になのだ。さらに言うと、いつもの紙ジャケではなくて、きちんとプラ・ケースに入っている。ついにCD1500円時代の到来か?と思わせる快挙である。前掲のレビューでも書いたが、CD1枚、1500円という値頃感はすこぶるよろしい。この値段で5つ星に巡り合えるととても得した気分になれるものだ。
このアルバム、BILL CHARLAPのドラムレス・トリオである。ドラムスの代わりにギターのPETER BERNSTEINが参加している。BERNSTEINといえば、かつて、BRAD MEHLDAUやBILL STEWARTを従えたカルテット・アルバム"STRANGER IN PARADAISE"(JAZZ批評 178.)を2003年に録音している。豪華絢爛な顔合わせにも関わらず、真面目で丹精なアルバム作りに感心したものだった。
このBERNSTEINはリーダー・というよりは名脇役のタイプだろう。ベースのWASHINGTONもそういう一人。CHARLAPをリーダーにどんな音楽を展開してくれるのだろう?全曲。ジャズのスタンダードとして燦然と輝く曲ばかりである。

@"I'M OLD FASHIONED" 
なんと洗練されていてセンスの良いおしゃれな演奏なのだろう。寛いだ夜にアルコールでも傾けながら聴くのに最高だ。こういうジャズもまたあり!
A"I CAN'T GET STARTED" 
B"STELLA BY STARLIGHT" 
C"GHOST OF A CHANCE" 
D"ALL THE THINGS YOU ARE" 
スタンダード集といえば必ず入ってくる名曲。WASHINGTONのミディアム・テンポのウォーキングが心地よい。
E"EASY LIVING" 
F"DARN THAT DREAM" 
G"ANGEL EYES" 
H"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" 
こういうスインギーな演奏も入っている。
I"BODY AND SOUL" 
J"GONE WITH THE WIND" 
最初の数コーラスをピアノとギターのデュオで演じるがなかなかスリリング。後にベースが加わり4ビートを刻む。
K"EVERYTHING HAPPENS TO ME" 
「良いねえ!」としか言い様がない。
L"THESE FOOLISH THINGS" 
これもまた・・・。

ドラムの変わりにギターが入ったトリオ・アルバムとしては、僕の中では、WYNTON KELLYの"PIANO"(JAZZ批評 11.)がすぐさま思い起こされるが、PHILLY JOE JONESの遅刻が思わぬ産物を生み出したという傑作である。ギター・トリオというのはドラムレスの分、音がまろやかになって寛いだ夜に聴くのに最適だ。CARLAP〜BERNSTEIN〜WASHINGTONのトリオはバランスにも優れていて耳に心地よい。それと相俟って、繰り広げられる全ての曲が名曲と言われるスタンダードばかりで好演に花を添えている。このアルバム、夜向きといっても、出来れば大音量で聴きたい。まるで、目の前で演奏しているようだ。
日本人のピアノ好き、スタンダード好きを狙った日本市場向けの企画モノということはすぐに分かるが、内容がよければ目くじらを立てることもない。むしろ、1500円でこんなに楽しめるアルバムを手に入れることが出来ることに感謝せねばならないだろうと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2010.07.01)

試聴サイト : http://www.venusrecord.com/v2/cd.html