独断的ジャズ批評 608.

TILLING-IKIZ-KLING
次に何かが起こりそうな緊迫感や期待感みたいなものが湧いてこないのが残念だ
"SOLITARY INTERESTS"
DANIEL TILLING(p), KRISTIAN "KLING" LIND(b), ROBERT MEHMET IKIZ(ds),
MAGNUS LINDGREN(cl on E), MAGNUM COLTRANE PRICE(vo on J)
2009年2月 スタジオ録音 (STOCKHOLM JAZZ RECORDS : SJR CD012)

スウェーデンのピアノ・トリオの新譜。DANIEL TILLINGは1975年生まれというから今年35歳。未だ若手の部類に入るだろう。他のメンバーもジャケット写真を見る限り、皆若そうだ。
スウェーデンのグループというとE.S.TのほかにJAN LUNDGRENやLARS JANSSONをすぐさま思い浮かべるが、最近話題のピアニスト、MAGNUS HJORTHとベースのPETTER ELDHなども生まれはスウェーデンだ。
このアルバムではクラリネットの入った演奏とヴォーカルの入った演奏がそれぞれ1曲ずつ挿入されている。TILLINGとベースのLINDがそれぞれ3曲ずつ曲を提供し、そのほかにはWAYNE SHORTER、A. C. JOBIN、CEDER WALTONなどの曲が演奏されている。

@"SOLITARY INTERESTS" 
どこかで聞いたようなメロディ。甘美でありながらどこかゴスペル風だったりカントリー風だったり。ヨーロピアン・テイストとファンキー・テイストがないまぜになった感じ。
A"OPENING DAY" 
ブラシがアップ・テンポで4ビートを刻み、ベースが唸り、ピアノが弾む。これはなかなか楽しくていいね。
B"BLACK NILE" 
W. SHORTERの曲だが、軽やかな演奏だ。
C"SLEEPING AT THE GATE" 
ベーシスト・LINDの書いたこの曲も爽やか系。
D"SPRING SCHEMING" 
E"SORRY" 
クラリネットが加わったことによって、サウンドが一変。何とも甘く切ない甘美な匂いが際立つ。クラリネットの音色が実にメランコリーな印象を与える。意外とこのグループの本質はこういう演奏にあるのかもしれない。このアルバム中、一番印象に残る。
F"BICKERING" 
一転してひょうきんな曲。2ビートで始まり、4ビートを刻みはじめるとピアノが楽しげに踊っている。続くベース・ソロも楽しげだ。
G"DOWNHILL" 
H"HOW INSENTIVE" 
JOBINの名曲をオーソドックスなボサノバ調で。
I"BOLIVIA" 
CEDER WALTONの書いた曲。
J"STAY" 
男性ヴォーカル入り。なんかピンとこないなあ。

黒ずくめの服装で並んだ3人のジャケットから受けるイメージとは違って、やっていることはすこぶるオーソドックス。というか、むしろ、爽やかさを感じる反面、迫力不足。もとゴツンゴツン弾き倒すのかと思っていたので、少々拍子抜け。クラリネットとヴォーカルの入った2曲がより一層そういう印象を強くさせているのかもしれない。
TILLINGのピアノはあくまでも軽やかで爽やかな印象。この手のグループはヨーロッパには五万とあるので生き残るにはもっと己がスタイルが必要だろう。決して優等生ぶっているとは思わないが、次に何かが起こりそうな緊迫感や期待感みたいなものが湧いてこないのが残念だ。言葉は少々古いが想定内なのだ。   (2010.02.22)

試聴サイト : http://www.myspace.com/tikjazz