TSUYOSHI YAMAMOTO
適度なユーモアを交えながら、乗りがライヴの乗りだね
"SPEAK LOW"
山本 剛(p), 岡田 勉(b), 植松 良高(ds)
1999年8月 スタジオ録音 (VENUS RECORDS : VHCD-4075)

この2月8日に、東京・紀尾井ホールで鈴木良雄の"MY DEAR PIANISTS"(JAZZ批評 587.)のリリースと南里文雄賞受賞の記念ライヴ・コンサートが開かれた。
このライヴは鈴木良雄と4人のピアニストとのデュオで構成されており、一切の増幅器を排除した生音のコンサートであった。その4人のピアニストとは秋吉敏子、イサオ ササキ、野力奏一、山本剛の4人である。いずれ劣らぬ実力者の4人であるが、その中で一番印象に残ったプレイヤーがこの山本剛。チンさんとの阿吽の呼吸もさることながら、ジャズ・フィーリングたっぷりで多少のユーモアを交えた演奏はジャズ・ライヴの場に最も相応しかった。
野力奏一はそっと寄り添う感じ、イサオ ササキは環境音楽のようにクール、秋吉敏子は他を寄せ付けぬオーラを発していた。女性に年齢を云々するのは失礼だが、この人、AHMAD JAMALなんかと同じくらいの歳になるらしい。この女性も本当に凄いわ!
そういえば、肝心の山本剛のCDを持っていないなあと思いつつネット検索したら、ヴィーナスの紙ジャケのこのアルバムが入手可能と出た。夜の10時過ぎにamazonに注文を入れても、翌日には届くという離れ技(ただし、プライム会員)。いやはや便利になったものだ。

@"COOL STRUTTIN'" SONNY CLARKの代名詞みたいなブルース。理屈なしにつつき進む、このドライヴ感が良いね。3人のコンビネーションもGOOD!
A"BLACK IS THE COLOR" ミディアム・テンポで躍動していく。単純明快!ここにあるのはSWING!岡田の力強いベース・ワークも素晴らしい。
B"SPEAK LOW" 
洗練されていてブルージー。相反する二つの顔を併せ持つ。これぞ、ジャズの醍醐味。
C"MISTY" 
山本の十八番とも言うべきERROLL GARNERの書いた名曲。美しい!しっとりとした名演に耳をじっと傾けたい。何とも、間がいいね。
D"DOXY" 
S. ROLLINSの書いたブルース。最近では、AKIKO GRACEが"GRACEFUL VISION"(JAZZ批評 493.)の中で演奏したのが僕のお気に入り。ここではストレートでグルーヴィな岡田のベースが光る。
E"JEALOUS GUY" 
ライト感覚のジャズ・バラード。
F"YESTERDAYS" 
ミディアム・テンポでスイングするスタンダード・ナンバー。まあ、兎に角、乗りが良いわ。こういう演奏を聴いていると、またライヴを聴きに行きたくなる。
G"I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE" 
H"COME IN FROM THE RAIN" 
山本の弾くバラードはカラッと爽やか。ベターっと重くないのがいいね。心に沁みる演奏だ。
I"GIRL BLUES" 
酒がますます美味しくなる山本のオリジナル・ブルース。ライヴ・ハウスでウィスキーでも飲みながら聴いたら盛り上がるだろうなあ。
J"CLOSE TO YOU"
 BURT BACHARACHの名曲もノリノリのスインギーな演奏にしてしまう山本のピアノが冴え渡る。

山本のピアノのタッチが綺麗。良い音色だ。粒立ちの良いピアノというのは聴いていて気持ちが良い。適度なユーモアを交えながら、乗りがライヴの乗りだね。このCDも素晴らしいけど、ライヴだったらもっと素晴らしく感じるに違いない演奏だ。
こういうアルバムが1500円でゲットできるというのは幸せなことだと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。

今月の24日には御茶ノ水の「ナル」で鈴木良雄とのデュオ・ライヴ(ピアノは野力奏一と二人)が予定されているようだし、これは行かねばならないでしょう。   (2010.02.12)

試聴サイト : http://music.e-onkyo.com/goods/detail.asp?goods_id=vhcd4075



独断的JAZZ批評 606.