独断的JAZZ批評 598.

NYKTOPHOBIE
スタンダード・ナンバーを2から3曲くらいを織り交ぜて個性的な解釈を示してほしいと思った
"INVISIBLE CHANGE"
OLIVER MAAS(p), MARKUS BRAUN(b), BERND OEZSEVIM(ds), DIMITRIJ MARKITANTOV(sax on #10)
2006年9月 スタジオ録音 (JazzHausMusik : JHM 180)


前掲のベルギーのトリオは全編オリジナルという意欲作にも拘わらず若者らしいダイナミズムが欠けていた。
今回はドイツの若手ピアノ・トリオだ。しかも、ピアノのOLIVER MAASの全編オリジナルだ。ドイツのグループというとMARC PERRENOUDの"LOGO"(JAZZ批評 524.)やOLIVIA TRUMMERの"NACH NORDEN"(JAZZ批評 517.)、SEBASTIAN STEFFANの"LOOK AT THE DOORKEEPER"(JAZZ批評 485.)あたりをすぐさま思い浮かべる。いずれも質実剛健の気風と同時に、美しさと力強さ、更には、躍動感を併せ持っているのを特徴としている。
果たして、このグループはどうだろう?ジャケットのイメージはすこぶる良い。一徹で有無を言わせぬ自己主張を感じるのだが・・・。

F"EVERYTHING YOU NEED" 
先ず最初に7曲目のこの曲から聴いてもらいたい。この曲でスタートするか、@でスタートするかでこのグループの印象はガラリと変わる。最初にガツンと来れば、目が覚めるというものだ。高速4ビートに乗った煌くピアノ・タッチとバッキングでの切れ味が素晴らしいではないか!まるで若かりし頃のCHICK COREAを聴くようだ。このアルバムのベスト。
G"FJORD FOCUS" 
超スローのフリー・テンポによるインタープレイ。ベースのソロから徐々にイン.テンポにシフトして終わる。
H"NOBODY KNOWS" 
ブラッシュの奏でる心地よい多ビートに乗って徐々に昂揚感を増していく。
I"OPEN CIRCLE" 
この曲のみアルト・サックスが入る。MARKITANTOVはブロー気味に激しくプレイするが、グループとしてのアンサンブルはピタリと決まっている。ここではOEZSEVIMの歯切れの良いドラミングにも注目したい。

@"SPIEGELN" 
最初に戻って、1曲目。物静かなテーマが波紋のように広がる。
A"VERGELTUNGSMABNAHME" 
こねくり回して作ったようなテーマ。曲としての面白みがない。もっとテーマを大事にしてほしいね。
B"DAS ROTE AUGE" 
C"FREDHUHN" 
アブストラクト風インタープレイ。
D"PART U" 小気味良く躍動していくそのさまが良い。ピアノのリフに乗って小気味の良いドラムスのソロが展開される。
E"ANNA"
 少々重たいテーマ。このグループにはこういう重苦しいスローな演奏が多い。まるでFとは好対照だ。やはり、Fの方にこのグループの「らしさ」を感じる。

全編、オリジナルで占めるというのはどうなんだろう?このアルバムも前掲に続いてピアニストの全曲オリジナルとなっている。
リスナーにとって、スタンダードというのは耳に馴染んでいるので、そのプレイヤーのプレイ振りを把握し易いというメリットがある。スタンダード・ナンバーは長い時間をかけて人々の評価、好感を得てきた曲でもある。普遍性と共感性があればこそ成り立って来た楽曲と言えるだろう。プレイヤーにとってもスタンダードこそ腕の見せ所だと思うのだが・・・。やはり前掲のアルバムと同様、スタンダード・ナンバーを2から3曲くらいを織り交ぜて個性的な解釈を示してほしいと思った。
とはいえ、このグループにはFのようなハイ・テンションのプレイがピタリと嵌っている。   (2009.12.30)

試聴サイト : http://www.myspace.com/invisiblechange