ERNST GLERUM
唯一無二のGLERUMサウンド
"57 VARIATIONS"
RUBEN HEIN(p), ERNST GLERUM(b), JOOST PATOCKA(ds), BENJAMIN HERMAN(as : on J, K)
2009年8月 スタジオ録音 (FAVORITE : FAV06)


オランダのベーシスト・ERNST GLERUMは1955年生まれというからもう55歳になる。ベーシストとしてばかりではなくピアニストとしても一流であることを過去の2枚のアルバム、"OMNIBUS ONE "と" TWO"(JAZZ批評 481. & 459.)で証明してくれた。
今回は本業のベースに専念したアルバムだ。ピアノには今、オランダで売り出し中というRUBEN HEIN、28歳を起用している。

@"IMPRESSIONISTIC" 
今までの2枚のアルバムとは入り方が違うのでちょっとびっくり。リリカルな演奏でスタートした。アルコとピアノのアンサンブルが素晴らしい。
A"SILVER NICHOLS" 
おおっ!こういうテーマ、こういうアドリブ。GLERUMスタイルという感じに戻ってきた。サクサクとしたブラッシュ、ベースが力強い4ビートを刻み、ピアノが音数少ないバッキング。ピアノ〜ベースと順にソロを執りテーマに戻る。
B"CONGA CACAO" 
実に黒っぽいテーマ。これもまさに、唯一無二のGLERUMサウンドだ。進むにしたがって昂揚感がどんどん増してくる。
C"LOW FLOW" 
今度はアルコ奏法だ。
D"BASS SONATA PART 1" 
Cの延長線にある曲。伸びやかで美しいアルコ奏法を堪能できる。お見事!続いて、ピチカート奏法に移るが、珍しくも曲想が今風のヨーロピアン・テイスト。
E"OMNIBUS THREE" 
"THREE"とタイトルについているが、これは"OMNIBUS ONE"や"OMNIBUS TWO"に入っている"OMNIBUS"と同じ曲だ。怒涛の演奏にニンマリ。
F"TWILL MUSIC" 
珍しくもスロー・バラード。RUBENのピアノはシングル・トーンを美しく散らばしている。GLERUMとの絶妙なインタープレイが素晴らしい。
G"TRAIN WAVE" 
4ビートを刻むGLERUMのベースが楽しげに踊っている。こういうのを聴くと「ジャズの原点はここにあり!」と再認識できる。浮き立つような4ビートが素晴らしいし、HEINの音数が少なくても良くスイングするピアノもいいねえ。僕はこの1曲をもって、「大満足!」と言ってしまいそう。
H"TUTTE LE COSE" 
このGLERUM、アムステルダム音楽学校のベースの先生らしいが、流石の腕前をアルコ奏法で披露している。4分間のベース・ソロ。
I"TOO MUCH" 
BENJAMIN HERMANのアルト・サックスのほかにストリングスが加わっている。ピアノのRUBEN HEINがその美声を披露している。トロリととろける甘口の演奏も最後はフェード・アウト。
J"KLOOK" 
一転してHERMANの激しいアルトを聴くことが出来る。

GLERUMがベースに専念し、ピアノに若手のRUBEN HEINを起用したことにより、今までにない一面を垣間見せてくれた。このHEINの起用は「吉」と出たと思う。今までの流れを崩さずに、新しい一面を切り開いた。美しいバラードや今風のヨーロピアン・テイストもあるが、全体を通していえるのは、それさえも唯一無二のGLERUMサウンドであるということ。3枚目になってもマンネリ化した雰囲気はないということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。

ところで、今回はプラスチック・ケースではなくて紙ジャケットだ。しかし、CDを納める紙製のCD保護ケースがジャケットよりもサイズが大きい。当然、この保護ケースはジャケットに納まらない。これは按配が悪い。こんなことは日本のCDでは考えられないことだが、海外で製作されたCDでは致し方ないことなのか?   (2010.01.03)

試聴サイト : http://www.ernstglerum.nl/



独断的JAZZ批評 599.