ROELOFSA LAUSCHER
見た目のインパクトはあるが音楽の中身までジャケットのイメージを植えつけてしまうとなると、これはやり過ぎだ
"CATHARSIS"
MIKE ROELOFS(p), WERNER LAUSCHER(b), GEERT ROELOFS(ds)
2009年1月 スタジオ録音 (PROVA RECORDS : PR 0906-CD09)


このジャケット・デザインは重たいなあ。何しろ、丘の上に立つ十字架、3本なのだから。いやが上にも重苦しいレクイエムなどを想像してしまう。
ROELOFSという名前が二人いるが、兄弟か他人かは分からない。それにベーシストのLAUSCHERを加えてグループ名になっているようだ。ベルギーを拠点として活動している若手のピアノ・トリオだ。ベースのWERNER LAUSCHERといえばMICHEL BISCEGLIAとの傑作アルバム"INNER YOU"(JAZZ批評 428.)で太くて箱鳴りのする素晴らしいベース・ワークを披露していた。そのアルバムのリーダーであったMICHEL BISCEGLIAがこのアルバムをプロデュースしている。そういえば、BISCEGLIAもイタリア系のベルギー人だ。

@"WACHTENSMOE" 
内省的な8ビートで始まるが、何やら暗い。どうも3つの十字架の印象が強くて暗く感じてしまう。
A"FOR ALL THE GOOD WE'VE HAD" 
気分を変えて聴いてみよう。これは定型パターンのベース・ラインに乗ってピアノが心地よくスイングしている。
B"KOUD" 
ベースのソロで始まるグルーヴ感豊かな曲。ドラムスがパーカッションのように賑やかな多ビートを叩き出す。
C"AGAPE" 
多ビートだがしっとりとした叙情的バラード。あくまでもしっとりと美しく、激しく昂揚感を増していくというスタイルではない。良く言えば、内に燃える炎とでも言おうか・・・。
D"TABULA RASA" 
このあたりまでに1曲でもスタンダード・ナンバーが入っていれば、もっと捉えどころがはっきりしてくるのだが・・・。こういう聞き慣れないオリジナルばかりだと、相当聴き込まないと素性がはっきり見えてこない。
E"OUT OF SQUARE" 
ここでは繰り返されるリフにのってドラムスのソロが長めにフィーチャーされる。
F"DE GELUKKIGE VROUW" 
美しいテーマだが、あっという間に終わる。
G"IN PREPARATION" 
H"MONSTERVERBOND" 
しっとり系の似たような楽曲。
I"BLUES FOR HERMAN" 
一転して、グルーヴ感溢れる演奏。
J"ONE FOR VINNIE
" またしてもしっとり系。終わると、3分後から隠しトラックが始まる。こういう風にする意味が僕には分からない。12曲目は聴いて欲しいの?欲しくないの?どっち?

全曲、MIKE ROELOFSの書いたオリジナル。ほとんどが非4ビートだ。どの曲も似たような印象に偏っている。意欲は買うが、やはり、2〜3曲くらいはスタンダードを入れたほうが馴染みが早い。何故ならば、スタンダード・ナンバーにはジャズ・ファン共通の普遍性と共感性があるからだ。ましてや、若手のグループとあればプロデュースする側にもそういう配慮があってもいいのではないだろうか?もっとも、その自作曲がとても素敵なものであれば話は別だが。
更に言うと、このジャケットの印象が強烈で星半分くらい損している。見た目のインパクトはあるが音楽の中身までジャケットのイメージを植えつけてしまうとなると、これはやり過ぎだと言わざるを得ない。
少々策に溺れたか?次回作では若者らしいストレートなダイナミズムを期待したい。   (2009.12.25)

試聴サイト: http://www.myspace.com/mikeroelofs



独断的JAZZ批評 597.