STANLEY CLARKE
上原ひろみのトリオ・アルバムだと思って聴くとがっかりする
STANLEY CLARKEのアルバムと分かっていても物足りない
"JAZZ IN THE GARDEN"
HIROMI UEHARA(p), STANLEY CLARKE(b), LENNY WHITE(ds)
2008年12月 スタジオ録音 (HEADS UP INTERNATIONAL : HUCD 3155J)


このアルバムは手元に届くまで上原ひろみのリーダー・アルバムだと思っていた。宣伝文句にも、やれ「2008年度のレコード大賞(優秀アルバム賞)」だとか「ゴールド・ディスク」だとか文字が躍っていた。今話題のジャズ・プレイヤーなので何かと宣伝文句を賑わしていたのだろう。
手にとって見ると"STANLEY CLARKE TRIO WITH HIROMI & LENNY WHITE"と書いてあり、初めてSTANLEY CLARKEがリーダーだと知った。いかにも企画モノの匂いがする。STANLEY CLARKEのトリオ・アルバムを企画していたところに、丁度折りよく日本でその活躍が話題になっていた上原に白羽の矢を当てたという感じだ。企画ついでに「さくら さくら」をサービス精神で入れてみて媚を売ろうと。そういうあざとさが透けて見える。

@"PARADIGM SHIFT (ELECTION DAY 2008)" 
A"SAKURA SAKURA" 
お好きにどうぞ。
B"SICILIAN BLUE" 
上原のオリジナル。先ず、曲がいいね。CLARKEの哀愁を帯びたアルコもいいし、上原のピアノも良く歌っている。願わくば、もっと切れがあったら良かった。少々遠慮気味だ。CHICK COREAとの名演"DUET"(JAZZ批評 467.) が記憶に新しいのでついつい比較してしまう。
C"TAKE THE COLTRANE" 
ベースとドラムスのデュオ。
D"3 WRONG NOTES" 
ブルージーな印象の32小節の歌モノ。こういう曲では上原にガツンガツン弾いて欲しかったなあ。
E"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" 
ベースがリーダーのアルバムだとベースがテーマを執ることが多くなるが、こういうの勘弁して欲しいね。別にどうってことのない演奏だ。
F"ISOTOPE" 
JOE HENDERSONの書いたブルース。テーマの後に延々とベースのソロが続くが一向に盛り上がらない。
G"BASS FOLK SONG NO.5&6" 
ベース・ソロ。お疲れ様。
H"GLOBAL TWEAK (IMPROVISED DUET)" 
ベースとピアノのデュオ。
I"SOLAR" 
ここでは活き活きとした上原のプレイが聴ける。やはり、こうでなくちゃあピアノ・トリオとは言えない。しかし、ソロにおけるCLARKEのチープなベース音はいただけない。ペンペンという音色は三味線の親分のようだ。
J"BRAIN TRAINING" 
K"UNDER THE BRIDGE" 
ここではエレキ・ベースに持ち替えているのかな?ファンキーな8ビート。後半に入る上原のソロは自由奔放で面白い。一番、上原らしさの出たアドリブだ。
L"L'S BOP"
 LENNY WHITEの曲で、長めのソロが用意されている。最後はフェード・アウト。

このアルバムは上原ひろみのトリオ・アルバムだと思って聴くとがっかりする。先にも書いたように、CHICK COREAとの"DUET"では自由に泳がせてもらっていたが、今度は勝手が違う。上原のアグレッシブで攻撃的な演奏は影を潜めている。非常に物足りない。当の上原自身も満足感は得られなかったのではないだろうか?
このアルバムがSTANLEY CLARKEのアルバムと分かっていても物足りない。企画倒れというヤツかもしれない。1972年に"RETURN TO FOREVER"で初めてCLARKEのベースを生で聴いたときはぶっ飛んだものだが、このプレイでは驚かないね。
LUIGI MARTINALEの"LE SUE ALI"(JAZZ批評 549.)で聴かせてくれたDREW GRESSの方が余程上手いと思ってしまう。   (2009.04.21)



独断的JAZZ批評 553.