DUKE ELLINGTON
グループの一体感よりもけんか腰の駆け引きこそが、このトリオのトリオたる所以であろう
"MONEY JUNGLE"
DUKE ELLINGTON(p), CHARLIE MINGUS(b), MAX ROACH(ds)
1962年9月 スタジオ録音 (EMI MUSIC : TOCJ-90030)


僕がこのアルバムを今更ながらに買おうと思ったのはLUIGI MARTINALEの"LE SUE ALI"(JAZZ批評 549.)における"AFRICAN FLOWER"を聴いて作曲者のELLINGTONの演奏を聴いてみたいと思ったからだ。MARTINALEの演奏はとても印象に残るアレンジで、そのアルバムの白眉ともいえる演奏だった。それに触発されてゲットしたのがこのアルバム。
ELLINGTONとMINGUSにROACHというトリオで、超個性的なメンバーがよくも揃ったものだ。メンバーからしていかにも毒がありそうだ。ジャケットに写っているMINGUSの顔が既にして怖いね・・・。これは一筋縄には行くまいと誰もが思うだろう。
ところで、このアルバムは当然ながら再発盤であるが、HI QUALITY CDとある。前々回のレビューに書いたDON FRIEDMANの再発盤、"LATER CIRCLE"(JAZZ批評 550.)はSHM-CDと呼ばれていた。両方ともポリカーボネイト樹脂を使用しているのだが、単にメーカーによる呼称違いということなのだろうか?どうもよく分からん。高音質を謳い文句に価格も1000円以上ポンと上がって、2600円から2700円くらいする。こりゃあ、儲かりそうだ。

@"MONEY JUNGLE" 
果たして、これがHI QUALITY CDとしての効果か?耳を疑いたくなるようなMINGUSのベースの音色。たるんだ弦を引っ掻くような音色に唖然、呆然となる。MINGUSのベースの音色ってこんな音だった?ブリッジを低くして弦の張りを弱くしていた?こんな軟弱な音色だったっけ?先ず、この音色にびっくりした。それでいてやっていることはけんか腰なのだ。これこそがHI QUALITY CDが裸にした真実の音、真実の演奏なのか?!このベースはないでしょう。
A"LE FLEURS AFRICAINES (AFRICAN FLOWER)" 
この曲もMINGUSの手先だけで弾いた軟弱な音色で始まる。こんなはずじゃあ・・・なかった。折角、この曲を聴きたいと思って買ったのに。ジャケットのMINGUSの鋭い目つきとは対照的な軟弱な弾き方に愕然。
B"VERY SPECIAL" 
我がスタイルを貫き通すELLINGTONのピアノがいいね。流石、大御所。MINGUSもROACHも「助さん、格さん」のように付き従っている。
C"WARM VALLEY" 
音数少な目のバラード演奏。
D"WIG WISE" 
E"CARAVAN" 
ピアノが打楽器と化し、鍵盤を打ちつける。これが一番ELLINGTONらしい。が、3人の演奏に一体感を感じない。むしろ、けんか腰の演奏と言えそうだ。まあ、この3人が仲良く一体感のある演奏をしていたら逆に様にならないよね。
F"SOLITUDE"
 至極真っ当な演奏にちょっとたじろぐ。

どの曲も演奏時間が短い。最長で5分半。3分台が3曲、4分台が2曲。5分台が2曲という具合だ。トータル時間も30分程度だ。このくらいで終わってくれた方が正解だろう。リイシュー盤には15曲も入っている"MONEY JUNGLE"があるが、これでは途中で投げ出してしまうだろう。
大物ジャズメンが集まってトリオ・アルバムを作ってみたが、顔見世興行的なアルバムになってしまった。グループの一体感よりもけんか腰の駆け引きこそが、このトリオのトリオたる所以であろう。

購入の動機付けとなった"AFRICAN FLOWER"はオリジナルよりLUIGI MARTINALEのアルバムの方が数倍素晴らしかった。この曲の演奏を含めてこのアルバムは、僕の評価基準の「躍動感、一体感、美しさ」からは大きく外れてる。   (2009.04.18)

試聴サイト : http://wavemusic.jp/cgi-bin/WebObjects/11ba0d8f688.woa/wa/read/11ba17099db/?jan2=0&jan=4988006868182



独断的JAZZ批評 552.