SHELLY BERG
4月の天気の良い爽やかな真昼間にビールでも飲みながら軽く聴くのが最適かもしれない
"THE NEARNESS OF YOU"
SHELLY BERG(p)
2008年5,6月 スタジオ録音 (ARBORS RECORDS : ARCD 19378)


SHELLY BERGがリーダーとなったアルバムは今までに1枚も紹介していない。しかし、JOHN FREMGEN(b)がリーダーとなった2002年録音のトリオ・アルバム"PIECES OF STRING"(JAZZ批評 349.)ではドラムスにはPETER ERSKINE、ピアノにこのSHELLY BERGが参加していて、とても個性的なアルバムに仕上がっていた。スタジオ録音にもかかわらずノリ的にはライヴ録音感覚でリラックスした演奏が楽しめた。特に名曲"A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE"や"THREE IN ONE"は充分に聴くものを楽しませてくれた。
翻って、このアルバムはSHELLY BERGのソロ・アルバムである。どんな切れのある演奏を聞かせてくれるのだろうか?

@"MY FAIR LADY MEDLEY : SHOW ME / I'VE GROWN ACCUSTOMED TO HER FACE / ON THE STREET WHERE YOU LIVE" 
CD1枚分をピアノ・ソロで弾き通すというのはそれなりの技量と感性が必要だと思う。だから誰にでも真似の出来る技ではない。事実、超一流といわれるジャズ・ピアニストしかソロ・アルバムを残していない。逆説的に言えば、ソロ・アルバムを出せるピアニストは一流の証であると・・・。BILL EVANS, RAY BRYANT, KEITH JARRETT, BRAD MEHLDAU,CHICK COREA, GIOVANNI MIRABASSI, 本田竹広, 小曽根真, AKIKO GRACE・・・などなど。
A"LIKE A LOVER" 
根底に陽気さを孕んだすっきりした演奏。このへん、ヨーロッパのピアノとは若干、ニュアンスを異にする。
B"THE TOUCH OF YOUR LIPS" 
C"THE NEARNESS OF YOU" 
スタンダードの名曲をしっとりと。しかし、暗くならないのがこのピアニストの持ち味。
D"GUYS AND DOLLS MEDLEY : GUYS AND DOLLS / I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE / IF I WERE A BELL" 
饒舌気味な演奏であるが、メリハリが効いているのでベターっとした感じにはならない。メドレーの最後に"IF I WERE A BELL"で終わる。
E"MY ONE AND ONLY LOVE" 
ピアノ・ソロで取り上げられることの多い曲だ。INAKI SANDOVALの"SAUSOLITO"(JAZZ批評 401.)やANDOREA BENEVENTANOの"TRINACRIA"(JAZZ批評 168.)のトリオ・アルバムの中で、この曲はソロで演奏されている。
F"CON ALMA" 
グルーヴ感の強いテーマがピタリと嵌っている。このアルバムのベスト。
G"DREAMSVILLE" 
H"WHERE OR WHEN"
 ノリの良い演奏だ。実に達者なピアノを弾く。ジクジクと言い訳がましいところがなくてすっきりしている。天性の明るさなのだろう。

バップ・テイストを根底にアメリカ人らしい陽気さが全編を貫いている。すっきり爽やかな好印象があるが、若干、軽い感じがする。別に重くする必要はないと思うが、深みがないような・・・そんな印象が残ってしまう。あくまでも軽く聞き流せるピアノ・ソロなのだ。まあ、4月の天気の良い爽やかな真昼間にビールでも飲みながら軽く聴くのが最適かもしれない。   (2009.04.14)

試聴サイト : http://www.emusic.com/album/Shelly-Berg-The-Nearness-of-You-MP3-Download/11398367.html



独断的JAZZ批評 551.