CHARMAINE FORD
まさに、ピアノを弾き倒すタイプなのだと思う
だから、普通の弾き方をしていると何か物足りない
"AFTER THE LAST DANCE"
CHARMAINE FORD(p), NICK TIPPING(b), RICHARD WISE(ds)
2007年12月 スタジオ録音 (FORD MOTION RECORDS : FMR 9005)

ニュージーランドのピアニストというは初めての登場ではないだろうか?
しかも、1980年生まれのうら若き女流ピアニストだというのだからびっくり。さらに2003年のアルバム"BLUES FOR GUPPY"ではニュージーランドのベスト・ジャズ・アルバムに選ばれているというのだから2度びっくり。ただし、こういうアワードをもらったという事実はミュージシャンにとっては成功への近道なのかもしれないが、リスナーにとっては関係ないことだ。むしろ、そういうプレイヤーに限って頭でっかちな演奏をしたりすることが多かったりするので注意が必要だ。
このアルバムは満を持しての登場というが、果たして?

@
"ELEVEN O'CLOCK" なるほどね!ニュージーランドで今や不動の地位を固めつつあるというのは本当のようだ。これならアワード云々の問題もなし。音に切れと勢いがあってけれんみがない。しかも、自信に溢れて堂々としている。ニュージーランドにも凄腕の若手女流ピアニストがいたもんだ!特に高音部のピアノの音がスカッと切れている。
A"ITCHY THOUGHT"
 楽しげにスイングする5拍子。
B"AS REQUESTED"
 3者の一体感とか緊密感に欠ける。ここから5曲、中だるみ。
C"THE WISE GUY"
 
D"TONOPAH" 多少抽象画の匂いのする演奏。何も面白くない。
E"FOLIETA"
 ミディアム・テンポのワルツ。ピアノのタッチが強いので、高音部でも音に切れがある。これって、このピアニストの特徴かと思う。ただ、こういうリリカルな演奏は似合わない。
F"MIDNIGHT CHARDONNAY" 
曲の後半部に入ってから徐々に高揚感が増してくるのだが、すっきりくっきりとはならない。
G
"LIKEWISE" 口ずさめないような難解でごった煮風のテーマだけど、グルーヴィに切れている。男勝りに鍵盤を行き来するハードタッチに拍手。高速の4ビートを刻みだしてからガンガン躍動する最後の2分間が凄い。ウーン、やるねえ。こういう演奏が、このCHARMAINEの持ち味なのだろうね。このアルバムのベスト。
H"AFTER THE LAST DANCE"
 研ぎ澄まされたような高音部のタッチが美しい。

このアルバムは最初の@やAに面白い演奏が入っているので大いに期待をしたが、聴き進むに従って「はてな?」と思うことが多くなった。聴くほどに評価が下がったとまでは言わないが、微妙な印象が付いて回る。あえて言えば、B〜Fまでが中だるみ。男勝りのピアノを弾くGあたりの演奏は面白い。このピアニスト、特に高音部のタッチが強くてクリア。
@Gのようなハード・タッチの演奏がピタリと嵌る。まさに、ピアノを弾き倒すタイプなのだと思う。だから、普通の弾き方をしていると何か物足りない。
それと、ピアノに比べてベースとドラムスの線が少し細い。丁々発止でガンガンやり合えるサイドメンの方が良かった。例えば、ENRICO PIERANUNZI TRIOで活躍しているMARC JOHNSON (b)とANDRE DEDE CECCARELLI (ds)との組み合わせとか、あるいは、北川潔(b)とBRIAN BRADE(ds)との組み合わせなんて面白いと思うのだが、どうだろう?
ニュージーランド、一国にとどまらず、海外にもどんどん進出して腕を磨いて欲しいと思う。そして、数年後には男勝りの丁々発止のピアノ・トリオを聴かせて欲しい。・・・待ってます。   (2009.02.23)

試聴サイト : http://www.myspace.com/charmaineford

          http://www.myspace.com/fordtippingwise



独断的JAZZ批評 538.