独断的JAZZ批評 529.

MICHAL TOKAJ
1曲ぐらい「これは!」というキラー・チューンが欲しいね
"BIRD ALONE"
MICHAL TOKAJ(p), DAREK "OLES" OLESZKIEWICZ(b), LUKASZ ZYTA(ds)
2003年8月 スタジオ録音 (GATS PRODUCTION : GPTS015)


MICHAL TOKAJは1974年のポーランド・ワルシャワ生まれだという。録音時、29歳という若さだ。
最近では東欧諸国のアルバムも結構頻繁に紹介されるようになってきた。これは有難いことで、居ながらにして世界各国のアルバムをゲットできるというのはジャズ・ファン冥利に尽きるというものだ。
このアルバムは4ヶ月前にゲットした。ポーランドの国内用にプレスされた最終在庫200枚が格安で出回ったもので、1200円という安値で購入できた。早い話が、ポーランドで消化できなかった不良在庫が日本で処分されたということだろう。
僕もその商法に飛びついた口だが、音楽というのは値段ではないね。安いに越したことはないが、大事なのは中身というのは古今東西、いつでもどこでも変わりはしない。

@"DAWN" 
タイトルのように「夜明け」を感じさせる神秘的なテーマ。徐々に太陽が昇ってきたのだろうか?静寂から喧騒へ、そして再び、静寂へ。
A"EVERY TIME WE SAY GOODBYE" 
C. PORTERの名曲を超スローの耽美的バラードで演奏。約6分の間に一度でもいいからクライマックスがあれば良かった。これでは美しいだけ。
B"SKYLINE" 
濁りのない透明感の強い演奏だ。後半部で盛り上がって来てガチャガチャやるが、躍動感という点でもうひとつ物足りない。
C"PENTULUM" 
これも神秘的なテーマであるが、面白さという点でどうも納得がいかない。これがこのトリオのスタイルだとすると、2枚目、3枚目のアルバムを買おうという気にはならない。
D"ONE DAY BEFORE" 
この曲の後半まで来てやっと4ビートを刻む演奏が聴けた。OLESのベース・ソロも良く歌っている。

E"LINES FOR OLES" 
OLESのベースがテーマを執る。ドラムスとのグルーヴィなインタープレイが面白い。ピアノが割り込んでくると同時に甘口になるが、このままベースとドラムスのデュオというのも面白かったかもしれない。
F"CHLOPI" 
G"PENTATONIC" 
珍しく大仰な前フリで始まるが、躍動感、緊密感も満足とはいえない。
H"TEARS" 
美しいだけのバラード。
I"BEGINNERS BANE" 
グルーヴィな8ビート。
J"BIRD ALONE" 
ピアノ・ソロ。

いかにも凍てつく大地を連想させる透明感の強い演奏スタイルだが、TOKAJのピアノは総じて甘口で女性的だ。
前掲のT. GEWELTのアルバム"OSLO"(JAZZ批評 528.)に比べると、グループとしての躍動感、緊密感の点で大きな開きを感じる。
ボリュームを下げてバック・グラウンドに流しておくにはいいかもしれないが、集中してジャズを楽しもうというマニアには物足りなく感じるだろう。もっと個性的であって欲しいし、もっと自己主張が強くていいのでは?それと1曲ぐらい「これは!」というキラー・チューンが欲しいね。
未だ若いし、何年か後に一皮も二皮も剥けたTOKAJの演奏を聴いてみたいものだ。   (2009.01.18)

試聴サイト : http://www.myspace.com/michaltokaj