DOCTOR 3
イージー・リスニングとは言わないまでも、それに近いものがある
"BLUE"
DANILO REA(p), ENZO PIETROPAOLI(b), FABRIZIO SFERRA(ds)
2006年12月 スタジオ録音 (VVJAZZ : VVJ 059)
DANILO REAのアルバムといえば、2003年録音のALDO ROMANOがリーダーとなったアルバム、"THREESOME"(JAZZ批評 215.)が思い出される。このアルバムを僕は2004年の"BEST 4"(JAZZ批評 237.)の1枚として選んだ。このアルバムではベテラン・ドラマー、ALDO ROMANOを中心にして切れのある演奏を聞かせてくれた。アブストラクトから瑞々しい水彩画のような演奏まで幅広く楽しませてくれたのは記憶に新しい。
そのDANILO REAが中心となったグループということで厭が上でも期待感は高かった。ジャケットから受ける印象も「硬派のジャズ」という雰囲気ではないか・・・。
まあ、正直に言って、このアルバムは好き嫌いがはっきり分かれるアルバムだろう。僕はといえば、辛口にならざるを得ない。期待したほどのアルバムではなかったというのが本音。
このアルバムは全てバラードである。だから、「演奏の切れ」みたいなものを期待していると裏切られる。実に叙情的な演奏で、悪く言えば、「媚びている」
@"CLOSE TO YOU" BURT BACKARACHの書いたポップスで一世を風靡した曲。実に聞きやすい演奏だ。「聞き易いことが悪いこと」とは言わないが、ジャズの醍醐味であるスリルや緊迫感みたいなものはない。
A"CANNONBALL" これもスロー・ロック風の聞き易い演奏だ。
B"MY FUNNY VALENTINE" メルヘンチックな演奏だ。以下、全11曲、耳に心地よいだけの演奏が延々と続く。
C"FIRE AND RAIN"
D"UN GIORNO DOPO L'ALTRO"
E"THE BLOWER'S DAUGHTER"
F“THEME FROM "TO KILL A MOCKINGBIRD"”
G"DON'T LET ME BE LONELY TONIGHT"
H“THEME FROM "SCHINDLER'S LIST"”
I"GENERALE"
J"EMOZIONI"
最後の曲まで、REAの切れる演奏というものがない。ただひたすら耳に心地よいだけだ。DANILO
REAから切れ味を取ってしまったら、これは普通のピアニストになってしまうだろう。"THREESOME"の強烈な個性はどこに行ってしまったのか?!
全曲、スロー・バラードであるし「聞き易さ」に徹しているので、長らくジャズを聴いてきた人には物足りないのではないだろうか?僕もそういう一人で、1〜2回聴いてしまうと、もう沢山かなと思ってしまう。イージー・リスニングとは言わないまでも、それに近いものがある。彼ら3人が本当にやりたかった音楽か僕には疑問も残るのだが、だからといって、また"DOCTOR
3"のアルバムを新に買って確認してみたいとは思わない。
DANILO REAを聴くなら是非、"THREESOME"(JAZZ批評 215.)をお勧めしたい。これはREA、乾坤一擲のアルバムだと思う。 (2009.01.08)
参考サイト : http://www.myspace.com/160631554