ERI YAMAMOTO
山本恵理のジャズはこういうジャズなんだという、ある意味開き直った強さみたいなものを感じるが・・・
"REDWOODS"
山本 恵理(p), DAVID AMBROSIO(b), 竹内 イクオ(ds)
2008年2月 スタジオ録音 (AUM FIDELITY : AUM049)

山本恵理自身のホームページにプロフィールが掲載されているので簡単に紹介しておこう。
「大阪出身。3歳よりピアノを始める。1995年大学院在学中、ニューヨークでヨボヨボのおじいちゃんだったTOMMY FALANAGANの演奏に深い感銘を受け、ファースト・セット終了後、FLANAGANにジャズの極意を聞く。答えは、ミュージシャンになりたいなら、すぐにニューヨークに来なさいと。同年、無謀にも何の当てもなくニューヨークに渡り、その後、REGGIE WORKMAN やJUNIOR MANCEに師事する。2000年から自己のトリオ(現在のメンバー)で活動を始める」
一人のピアニストの演奏に感銘を受け、その足で、ニューヨークに飛んでジャズ・ピアニストを目指すなんて凄い決断力だなあ!しかも、ピアノ以外ではメシは食わないと決めているそうだ。
このアルバムにはその人の芯の強さが表れているね。8曲、全て山本のオリジナルだという。

@"THIS IS AN APPLE" 
玉を転がすようなシングル・トーンというのではなくて、ブロックコードでメロディを奏でていくような感じ。
A"WONDER LAND" 
ベースの定型パターンに乗ってブラッシュとピアノが軽く跳ねる。山本のピアノは概して、中音域での演奏が多いので、ともすると表現にメリハリとか変化に乏しいという印象を与えるかもしれない。
B"BUMPY TRAIL"
 「凸凹道」というタイトルの如く。スマートにスカッととは行かない。非常に無骨で、流麗とは言い難い演奏だが、これが山本の「らしさ」なのだろう。竹内の長めのドラム・ソロも無骨である。
C"REDWOODS" 
この曲はSAN FRANCISCOの近くにあるMUIR WOODSの印象を綴ったものらしい。森閑とした空気を伝えているが、ジャズらしいグルーヴ感やドライヴ感はない。
D"BOTTLED WATER PRINCESS" 
これもジャズらしくないテーマ。ここまで聴いてきて思うのはピアノの音色がもうひとつという感じ。音像にくっきり感がない。ここでも音の中心は中音域でメリハリに欠ける。どの演奏も似たように感じてしまうのは全曲が山本のオリジナルだということばかりではないだろう。
E"MAGNOLIA" 
全曲に通ずるオリジナリティ。山本恵理のジャズはこういうジャズなんだという、ある意味開き直った強さみたいなものを感じるが・・・。
F"STORY TELLER" 
ピアノの音色にもっとアタック感や透明感があると印象ががらりと変わる気がする。録音技術のことは分からないが、もっともっと良い音で録音できたはずだと思いたくなる。そういう部分で少し損していると思う。
G"DEAR FRIENDS" 
カントリー風のテーマ。

このアルバムにグルーヴ感とかドライヴ感は望めない。言ってみれば、どこにもないジャズ、誰にも真似の出来ないジャズって言えるかも。まさに「山本恵理ワールド」なのだ。そういう意味で、聴く人を選ぶと思う。僕の求めるジャズとは大きな隔たりがあるが、こういう独創性というか誰にも媚びないジャズというのは尊重したいと思う。
願わくば、もっとピアノの音像がクリアであれば良かった。   (2008.09.02)



独断的JAZZ批評 499.