CATTLEYA
なんかとても重苦しい余韻を残したままなのだ
"DIARY"
MICHEL BISCEGLIA(p), VOLKER HEINZE(b), HARALD INGENHAG(ds)
2005年11月 スタジオ録音 (PROVA : PR 0705-CD3)

このCATTLEYAはドラムスのHARALD INGENHAGがリーダーを務めるグループで、ピアノにあのMICHEL BISCEGLIAが参加している。BISCEGLIAにとってはもうひとつのプロジェクトということができるだろう。最近、日本でも話題のBISCEGLIAはベースにWERNER LAUSCHER、ドラムスにMARC LEHANを従えて2006年〜7年に録音されたトリオ・アルバム、"INNER YOU"(JAZZ批評 428.)で一躍脚光を浴びた。このプロジェクトがスタンダード・ナンバーやジャズの巨人のオリジナルを取り入れているのに対し、こちらのCATTLEYAはほとんどが自分たちのオリジナルで構成されている。
このアルバム"DIARY"は2005年録音だから、丁度、2003年録音の"SECOND BREATH"(JAZZ批評 432.)との中間期に位置する。2003年から07年の間にBISCEGLIAは長足の進歩を遂げているので、このアルバムも興味津津で聴いてみた。全10曲のうち、INGENHAGが5曲を提供し、BISCEGLIAが3曲、3人の競作が1曲で、もう1曲が昔、流行ったポップス。

@"DIARY" 内省的、感傷的なピアノとベースのユニゾンで始まる重いテーマだ。
A"SONG FOR PABLO" 
アレンジに凝っていて、テーマとはおよそかけ離れた印象のロマンティックな演奏が途中に入る。
B"I CALL YOU" 
最初から最後までピアノの右手はアルペジオで通す。その合間をベースがアルコ弾きで埋めていく。
C"INNER" 
これも非常に内省的なテーマで始まる。
D"NOUVELLE" 
スロー・テンポのリリカルな曲。

E"RED EYE" 
耽美的な透明感あふれる曲で、ピアノが一条の光のように輝いている。あくまでもクールである。エモーションの高揚があるとさらにいいのに・・・。
F"RELAX SONG" 
タイトルどおりにリラックスした軽い8ビート。ここまでの曲は内省的で、どちらかというと重苦しい演奏が続いたので本当にリラックスできる。
G"WHITER SHADE OF PALE" 
この曲はPROCOL HARUMの「青い影」。昔、若いときに流行った曲だ。このタイトル名を入れて検索したらYOU TUBEに40年前当時のビデオが沢山投稿されていた。興味のある方は一度、"WHITER SHADE OF YOU"とキーワード検索されてみたら良い。
H"A TABLE" 
I"TRIO IMPRO" 
躍動するベースの定型パターンで始まるのだが、ピアノがガツンと来ないまま終わってしまう。

全体的にはアレンジに凝った印象が強い。ひとつのテーマの中でいろいろなことをやろうとして、結果としてアレンジに懲り、決め事が多くなってしまったのではないか?このパターンが非常に多いので、聴いていくうちに段々飽きてくる。もっとストレートにやって、ストレートに躍動して欲しいと思うジャズファンは多いだろう。聴き終わったあとに爽快感みたいなものが残らないのだ。なんかとても重苦しい余韻を残したままなのだ。
このCATTLEYAが目指す方向性はBICESGLIAのオリジナル・トリオと明らかに違う。リーダーであるドラムスのINGENHAGの目指す方向なのだろうか?だからと言うべきか、INGENHAGのドラムスは最後まで爆発することはない。

来年もまた沢山のいいアルバムに出会えますように!   (2007.12.31)



独断的JAZZ批評 457.