MATHIAS ALGOTSSON
仮に、親子以上に年齢差があっったとしても、その場ですぐに意気投合が出来るのがジャズの魅力なのだ
"IN COPENHAGEN"
MATHIAS ALGOTSSON(p), JESPER BODILSEN(b), ED THIGPEN(ds)
2007年6月 スタジオ録音 (SAVVY : SOL SV-0006)

MATHIAS ALGOTSSONは1971年生まれ。JESPER BODILSENは1970年生まれ。対してED THIGPENの生まれは1930年だというから40歳の年齢差。常識的には、孫とまでは言わないが息子以上の年齢差がある。これってジャズの世界では格段珍しいことでもない。何故なら、ジャズプレイヤーは墓場までジャズプレイヤーであり続けるからだ。
MATHIAS ALGOTSSONのアルバムは既に"YOUNG AND FOOLISH"(JAZZ批評 329.)を紹介している。このアルバムは大衆的でありながら良質な気品を感じさせるアルバムだった。
今回は、冒頭に紹介したような特徴あるメンバーに先ずは目がいった。ベースのJESPER BODILSENは次の時代を担うヨーロッパの俊英ベーシストだ。STEFANO BOLLANIやKASPER VILLAUMEのアルバムでの活躍が目覚しい。昨年のKASPER VILLAUMEとBOB ROCKWELL(ts)の武蔵野スイングホールでのライヴ(JAZZ批評 343.)で惚れ直してしまった。一方、ED THIGPENは言わずもがなであるが、O. PETERSONの共演で誉れも高い。仮に、親子以上に年齢差があっったとしても、その場ですぐに意気投合が出来るのがジャズの魅力なのだ。

@"MR. TASTE" 
THIGPENのサクサクとしたブラッシュ・ワークで始まるブルース・フィーリング溢れる曲だが、ALGOTSSONの書いた32小節の歌モノ。
A"MANHATTAN" 
RICHARD ROGERSの書いた曲で、陽気でハッピー!BODILSENの唸りを上げる4ビートのウォーキングが素晴らしい。
B"JAG HAR BOTT VID EN LANDSVAG" 
ALGOTSSONはピアノ使いとして、やはり、一流の部類に入るだろう。BODILSENのベース・ワークも力強く、自信に溢れていて「確かだ!」
C"BYE BYE BLACKBIRD" 
ベースの定型パターンに始まる。テーマにおけるドラムスとベースの控えめなサポートが素晴らしい。明るいタッチ、良く歌うフレーズ、やはり、このピアニストは只者ではない。後半部に挿入されているBODILSENの少し擦れたピチカートのソロが生々しい。
D"BUT BEAUTIFUL" 
美しいバラード。こういう曲はALGOTSSONのお手の物だろう。BODILSENのベース・ソロに続くALGOTSSONのピアノにうっとり。

E"COPENHAGEN" 
ALGOTSSONのオリジナル。軽妙な曲でアドリブでは4ビートがグイグイと突き進む。こういう推進力はいいベーシストでないと生まれてこない。THIGPENのソロを経てテーマに戻る。3分弱と短いのが残念!
F"TAKE THE A TRAIN" 
重低音で始まるピアノ・ソロ。時にひょうきんに、時にドライブ感満載で弾き倒す。歌心あり!
G"LIFE" 
ALGOTSSONのオリジナル。この人、コンポーザーとしても才能豊か。@、E、Hとこの曲がオリジナル。硬軟揃っていい曲だ。
H"THE BLUES" 
タイトルどおりのブルース。ベースのBODILSENがフィーチャーされている陽気なブルース。BODILSENもSTEFANO BOLLANIやKASPER VILLAUMEとの共演時とは一味違う味を出している。
I"SMOKE GETS IN YOUR EYES" 
聞き古された曲の何気のない演奏であるが、シンプルで太く逞しいベース・ワークが香辛料のように効いていて、だからこそ、何回も聴きたくなるというものだ。

ヨーロッパの洗練されたジャズという印象は強い。それでいて結構陽気であり、ひょうきんでもある。北欧特有の研ぎ澄まされた透明感や冷たさはむしろないと言える。全10曲で44〜45分程度と比較的短い。1チューンあたり4分程度というのは若干、食い足りない。それが残念。それと、前作に続いて、多少聴き易いジャズばかりを演っているという印象がある。
が、この才能豊かなピアニストはそのうち、皆を「うん!」と言わしめるアルバムを出すに違いない。次の作品ではオリジナルを中心とした自分の演りたいジャズをやりきって欲しいと思う。そういう期待感ゆえに星半分ほど減点した。   (2007.11.01)



独断的JAZZ批評 444.