独断的JAZZ批評 392.

RED MITCHELL
このベースの音色は僕の許容の範囲を超えている
"TALKING"
KENNY BARRON(p), RED MITCHELL(b), BEN RILEY(ds)
1989年1月 スタジオ録音 (CAPRI RECORDS : #74016-2)

不覚にも、3枚で○○%引きという商法にまたしても乗ってしまった。輸入盤2枚までは問題なかったのであるが、ついもう1枚と数字合わせに購入したのがこのアルバムだ。目先の利益に走るとどうも碌なことがない。
以前、RED MITCHELLのレビューを書いていたことを、実は失念していた。アルバムが届いてから、初めて2枚目であることに気がついた。しかも、前回のレビューではこき下ろしている。そのアルバムは録音時期も比較的、このアルバムに近い1992年録音の"LIVE AT PORT TOWNSEND"(JAZZ批評 291.)だ。そのアルバムはGEORGE CABLESとのデュオだった。この時に、辛い点をつけた理由を長々と書いているが、今回も言わんとするところはまったく一緒だ。
例え、名手、KENNY BARRONが付き添っているといっても、そのモゴモゴとしたベース音はいただけない。今回はモゴモゴ音に加えて、矢鱈と左手をスライドさせて音程を確保する奏法が目立つ。誤魔化しの奏法だ。特に、Dの"DON'T EXPLAIN"では鼻(耳)につくほどこれを演るので、辟易した。音程が悪いのはいただけないが、それを奏法で誤魔化そうとするのはもっといただけない。
残念ながら、このアルバムを何回も繰り返して聴いてみようという忍耐力を僕は持ち合わせていない。

@"TALKING" 
BARRONのピアノはいつ聴いても乗りが良くてお洒落だ。ベースのソロがなければ、十分に聴ける。RILEYのドラムスも小気味良く歌っている。
A"I'M OLD FASHIONED" 
ヒエー!いきなりベース・ソロときたもんだ。
B"THE PUREEST HEART (FOR LADY)" 
C"PENNIES FOR SUE" 
D"DON'T EXPLAIN" 
良くぞここまで増幅に頼ったものだ。まるでチューニングの狂ったエレキベースのようだ。
E"EL SUENO" 
F"ER - UM - UH" 
G"SHE'S FUNNY THAT WAY" 
H"HEAVEN'S HERE" 
I"LOCOMOTIVE" 

RED MITCHELLのベースに目(耳)を瞑れば、結構、聴ける。名手、BARRONはここでも健在だし、RILEYもしっかりとしたサポートをしている。
残念ながら、僕はこの電気増幅音が嫌いなので、何としても受け入れ難いのであるが・・・。何もそんなに目くじら立てなくてもいいじゃないかという意見もあるだろうが、僕の許容の範囲を超えているんだなあ。
誤解なきように言えば、そのこと以外は乗りの良いピアノトリオであることも間違いない。流石、名手BARRONが参加しただけのことはある。この点は、前掲のGEORGE CABLESとは格が違うという感じなのだ。それでも、ピアノ・トリオというのは誰か一人が孤軍奮闘したとしても駄目なんだよね。 やはり3人揃って、何ぼのもんなんだよね。  (2007.02.01)