独断的JAZZ批評 385.

THEO SAUNDERS
「まあ、普通のアルバムだ・・・」
2〜3回聴くと、それだけでもう満腹となってしまう
"THREE FOR ALL"
THEO SAUNDERS(p), CHRIS SYMER(b), MICHAEL STEPHANS(ds)
録音年月不明 スタジオ録音 (BLUE CHIP 878400-2)

今回から次回のレビュー予告をやめることにした
これをやっていると、途中で投げ出すわけにもいかず、無理してレビューを書くことになるのであるが、これが結構、苦痛だ
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最近流行の「ピアノ・トリオ 500選」とか「PIANO・JAZZ受注ベスト○○」とかには良く掲載されているアルバムだ。あまり知られていないピアニストなので、「隠れた名盤」扱いなのだろう。そんな宣伝文句に引かれて購入した1枚であるが・・・・。

何ゆえ、このアルバムには録音年月の記載がないのだろうか?
パーソネルと録音年月くらいは最低の情報として記載して欲しいと思うのだが、いかがだろう?
このCDは、実に怪しげではある。今言ったように録音年月の記載がないのと、ジャケットが如何にも貧弱。ジャケットの表を見ても、裏を見ても写真がピンボケで、如何にも、コンピュータ処理でコピーしたような感じ。もしかして、海賊盤だろうか?

結論から先に言うと、「まあ、普通のアルバムだ・・・」 取れたてて「良い!」と絶賛するほどでもないし、かといって、「これは駄目だ!」というほどでもない。世の中にはこれ以上のアルバムは五万とあるし、これ以下のアルバムも五万とあるだろう。平均的なアルバムと言えるかも知れない。
でも、これでは期待している僕には満足とは言えない。おまけして星4つが良いところで、買取に出しても後悔することはあまりなさそうだ。迷った時は、辛目の採点ということで、3.5星にした。したがって、近々、中古の買取に出すことになるだろう。何故なら、また引っ張り出して聴いてみたいと思うことが先ずないと予測できるから。
このトリオ、ノリだけは良い。軽いノリだ。最近のアメリカのピアノ・トリオというのは得てしてこういうタイプが多い。2〜3回聴くと、それだけでもう満腹となってしまう。
というようなわけであるから、とりわけピカッと光る部分があるわけでもなく、ごくごくありきたりのピアノ・トリオではある。

@"THE KICKER" アップ・テンポのブルース。ドラムスのソロを経てテーマに戻る。
A"IN A SENTIMONKAL MOOD" "SENTIMENTAL"でなくて"SENTIMONKAL"がミソ。"MONK"に掛けているのだろう。センチメンタルなムードは全くなくて、ゴリゴリと演奏する。
B"WHEN YOU WISH UPON A STAR" 一転して、お馴染みのバラードを軽快なミディアム・テンポで。
C"NARDIS" これも軽〜い演奏だ。こういう軽さはこの曲としては珍しいのではないだろうか?
D"WISH FROM THE HEART" これは全く毛色の違う演奏スタイルになっている。へえー!こんな演奏もするんだ。この曲を含めて「何でも屋」の傾向がある。そういう一連の演奏スタイルが「軽さ」に繋がっているのだと思う。
E"CRY ME A RIVER" 名曲をしっとりと演奏するが、ベースが電気的増幅に頼って、ビート感に乏しいのが惜しい。
F"COME RAIN OR COME SHINE" これもスタンダード。
G"WAITING FOR YOU" 
H"ELLIE'S NIGHT OUT" 
I"IF I SHOULD LOSE YOU" 
J"MISTERIOSO" 

言葉は悪いが、節操なく何でも演るピアノ・トリオという印象を受ける。しち面倒くさい「アイデンティティ」や「個性」を要求しないのであれば、充分、楽しめるアルバムだと思う。残念ながら、僕には媚を売っているように聴こえてしまうのだ。気分転換に「軽いノリのジャズ」を聴いてみたいと思ったときに最適かもしれないが、何回も聴いていると直に飽きてしまうのだ、この手の演奏は。
アメリカ発のアルバムとしてはJOHN FREMGENの"PEACES OF STRING"(JAZZ批評 349.)やMICKAEL KOCOURの"HIGH STANDARDS"(JAZZ批評 353.)の方が、アイデンティティと個性に溢れていて面白いと思うのだが・・・。   (2007.01.04)