ALBORAN TRIO
たとえ1曲であっても良い曲には金を払えるという人なら、この1曲のためにこのアルバムを買ったとしても損はないかも
"MELTEMI"
PAOLO PALIAGA(p), DINO CONTENTI(b), GIGI BIOLCATI(ds)
2006年6月リリース スタジオ録音 (ACT 9448-2)
        
"ALBORAN"とはアフリカとヨーロッパに面した地中海の入り口にある地名からとったネーミングのようだ
録音年月日は不明だが、ドイツで今年の6月に発売になっている
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いやあ、それにつけても次から次へと新しいアルバムが出てくるもんだ。今回紹介するアルバムも初登場のピアノ・トリオ。それだけ、ジャズの世界も新陳代謝と世代交代が起こっているということだろうか。
ジャケットの写真を見ると如何にもヨーロッパの匂いのする面構えの面々が写っている。そして、まさにヨーロッパのジャズとしか形容のしようのない「美旋律とインタープレイ」が横溢している。

Iを除く全ての曲がピアニスト、PAOLO PALIAGAの作曲だという。間違いなくどの曲も美旋律である。美旋律のオンパレードなので、1度や2度はどこかで聞いたことのあるような旋律が次から次へと押し寄せてくる。が、逆にそのことがこのグループの可能性を狭めているように思えてならない。
それとベースがリーダーかと思わせるくらいしゃしゃり出てくる。ベースとピアノのインタープレイを売り物にしているグループなのだろう。このベーシスト、CONTENTIの音程が時に、微妙に怪しくなるので気になり始めると気になってしまうが、目くじらを立てるほどのことでもない。反対にドラムスはいないのではないかと思えるほど控え目である。ドラムスがもっと自己主張すると更に分厚い演奏になったと思う。

@"NIC'S ROAD" 
やはりどこかで聞いたことがあるような・・・。
A"BALKAN AIR"
 少し大仰なイントロではあるが、イン・テンポになってからが楽しい。この演奏は面白いと思う。ピアノの弦を押さえながら演奏しているのだろうか?3つの楽器がいずれも打楽器と化して躍動しているところがユニーク。哀愁のあるテーマと相俟って、これは日本人が好みそうだ。文句なしのこのアルバムのベスト。たとえ1曲であっても良い曲には金を払えるという人なら、この1曲のためにこのアルバムを買ったとしても損はないかも。ここではドラムスのBIOLCATIも力強いビートを刻んでいる。これは痛快だ!

B"PIANISSIMO" 
美旋律とベースとのインタープレイ。
C"CINQUE LUNGHISSIMI MINUTI"
 GIOVANNI MIRABASSI(INDEX)風の演奏で美旋律が一杯。でも、この曲は躍動しているのでとても心地よい。
D"DUENDE" 
今度はベースのアルコ弾きにエフェクターを使用しているのだろうか?さながら、E. S. T. (JAZZ批評 371.)のようでもある。
E"HOY ES MANANA?" 
珍しくスティックを握って4ビートを刻む。

F"HO SIGNATO CHE MI AMAVI" 
ピアノが歌い、ベースが絡みつく。こういうスタイルがこのグループの十八番なのだろう。
G"MELTEMI" 
出だしの部分は、まさに"E. S. T."を彷彿とさせる演奏ではあるが、なかなかグルーヴィで逞しい一面も見せてくれた。
H"NINNA NANNA NIC" 
美旋律バラード。
I"THEME FROM THE MOVIE "PINOCCHIO" 
丁々発止のテンションの高まりに聴き所あり。

最初にこのアルバムを聴いたとき、2〜3回聴いたら飽きて、二度と聴くことはないかも知れないと思ったものだが、さにあらず。結局、1週間通して聴いてしまった。今では、それなりの魅力に溢れたアルバムと思っている。音作り的には"MIRABASSI"風だったり、"e. s. t."風だったりして、いろんなグループのエッセンスをチョイ取りしている感じはあるが、そういう中で自分達の色も垣間見れる。更に、独創性や泥臭さが加われば益々面白くなってくるだろう。
何といってもAにおける演奏にこのグループのオリジナリティが発揮されていると思う。   (2006.11.23)



独断的JAZZ批評 377.