独断的JAZZ批評 367.




山中 千尋
原点に戻って、レコード会社も変えて、心機一転やり直してもらいたいと思うのは僕だけではないだろう
"LACH DOCH MAL"
CHIHIRO YAMANAKA(p), LARRY GRENADIER(b), JEFF BALLARD(ds),
JOHN CARLINIC(g:on 1, 5、 banjo:on 3)
2006年6月 スタジオ録音 (VERVE UCCJ-2052)

ジャズ・コーナーに行くとずらりとこのアルバムが並んでいた
試聴をしてみた
買うか止めるか大いに迷った
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何故、購入を迷ったか
@CDアルバムとしては破格に高い。僕が買ったのは「通常盤」で3000円。HMV仕様の「限定盤」だと3200円。前掲の"METHENY MEHLDAU"が輸入盤で1750円であったことを考えれば高すぎると言わざるを得ない。ましてや、不要なDVD映像が1曲分ついているという。こういうものを入れて付加価値を高めたつもりで高値設定したのだろうが、全然、付加価値になっていない。無用の長物である。HMV限定盤を作る余裕があるなら、DVD映像を除いて価格の安い限定盤を出して欲しかった。
A試聴して、がっかりした。Kの"THAT'S ALL"が入っていなかったら、絶対買わなかっただろう。この1曲のためだけに購入したといってもいい。

正直に言って、山中千尋はレコード会社を変わる前後から変調気味である。変わってからはまるでアイドル歌手のような扱いだ。先に書いたHMV限定仕様のモデル然としたジャケットを作ったり、おまけのポスターが付いたり、はたまた、プロモーションと称して店頭で電気ピアノを一人で弾かされたり、もう、気の毒としか言いようがない。
このアルバムでは"WHEN OCTOBER GOES"(JAZZ批評 113.)の頃の瑞々しさが失われてしまった。バンジョーが入ったロシア民謡風、電気ピアノの曲、ボサノバ、スパニッシュとてんこ盛り。演奏が硬い。肩に力が入り過ぎている感じでしっとり感がない。妙に軽くてカサついた感じだ。この軽さを承知の上なら聴けないこともない。

BRAD MEHLDAU TRIOの磐石なサポート陣も生かしきれていない。もうこれからはGRENADIERとBALLARDを使わない方が良いと思う。BRAD MEHLDAU TRIOの「ジャズの魂を震わす」強烈な演奏(JAZZ批評 365.)と常に比較されてしまうからだ。

@"QOAND BIRON VOULUT DANSER" 
A"SABOT" 
B"SERENADE TO A CUCKOO" 
C"RTG" 
D"THE DOLPHIN" 
E"NIGHT LOOP" 
F"ONE STEP UP"
G"LACH DOCH MAL" 
H"LIBEBESLEID" 
I"MODE TO JOHN" 
J"WHAT A DEFF'RENCE A DAY MADE" 
K"THAT'S ALL" 
唯一、山中らしい瑞々しさの溢れる演奏。

日本を代表する女性ピアニストとして大いに期待していたひとりであるが、最近のアルバム作りには?????このまま、可愛いだけのアイドル的ジャズ・ピアニストで終わってしまわないことを祈りたい。
原点に戻って、レコード会社も変えて、心機一転やり直してもらいたいと思うのは僕だけではないだろう。   (2006.09.23)