独断的JAZZ批評 364.




HELGE LIEN
一度、極上を味わってしまうと普通の味では満足できなくなるのが人間の性というものだ
"HELGE LIEN TRIO LIVE"
HELGE LIEN(p), FRODE BERG(b), KNUT AALEFJAER(ds)
2004年10月(
E,F), 2005年5(A,C,D), 8月(@,B) 
ライヴ録音 (CURLING LEGS CLP CD 95)

HELGE LIEN TRIOの'04年〜'05年のライヴ録音からのピックアップ
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HELGE LIEN TRIOというのはインパクトの強いグループと言えるだろう。ヨーロッパのジャズ然としたしたところが魅力でもあり、3者が対等な立場で演りあうというのもヨーロッパ的である。このアルバムより後の2006年1月に録音された"TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.)はいくつかの不満点はあってもアルバム全体としてみるととても素晴らしいアルバムだった。僕の中では、恐らく、今年の5本指に入る傑作だと思っている。
更に遡って、2000年録音の"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"(JAZZ批評 228.)も後半の3曲が素晴らしかった。いずれのアルバムも美しさの中にガッツと躍動感、緊密感が横溢するアルバムであった。

当アルバムは2004年の10月から2005年の8月にかけて録音された3回のコンサート・ライブから7曲をピック・アップして構成されている。3回のコンサートからのピックアップということは、勘ぐれば、どのライヴもあまり出来が良くなかったのではないだろうか?通常ならば、ひとつのコンサートを1枚のCD、あるいは、2枚のCDに収めるのが順当なところだ。ところが、このアルバムは3つのコンサートから2〜3曲をピックアップして1枚のCDに収めている。演奏を聴けば分かるが、曲によって出来にバラつきがある。それ故、ピックアップとなったのだろうと僕は推測する。

@"PUTTE" しっとりとした曲想で始まり、徐々に、インテンポになっていく。
A"EN GANSKE LITEN RUNDING" @からAにはエンドレスで繋がっていくのだが、録音日を見ると@とAは違う日付だ。一体、どうなってんの?録音データが間違っているのか、あたかも連続する演奏のように編集したのであろうか?演奏はというと、これ見よがしのヒステリックなベース・ソロに興が醒める。
B"MEN, ER DET JAZZ" 短目の2分40秒。
C"SPIRAL CIRCLE" 同名タイトルのアルバムも発売されているが、当HPでは未掲載。機会があればレビューしようと思う。静かな語り口で始まり徐々に高揚感が増していく手法はLIENの得意技だ。
D"DE SMA BJORNENE" 7分を過ぎた辺りから徐々に高揚感を増してきてひょうきんなというかヒステリックなテーマに戻ってストンと終わる。8分半。

E"TAKE FIVE" ご存知、PAUL DESMONDの大ヒット曲。このアルバムの中ではひときわ光っている。長いドラム・ソロからピアノとベースが絡み、続いて聴き慣れたテーマに。急速調の演奏にも違和感を感じない。3者の丁々発止の掛け合いが凄い!拍手鳴り止まず。長尺の11分半。
F"NAV OG NATT" 一転して、美しいテーマをピアノが紡いでいく。この美しさはLIENというピアニストの根底にいつも脈々と流れている。その集大成とも言うべきアルバムが"TO THE LITTLE RADIO"であると僕は思っている。

このアルバムの中では、2004年10月録音のEとFが抜きん出ているのではないだろうか。

最新盤の"TO THE LITTLE RADIO"は日本酒に例えると、芳醇で深い味わい、それでいて、飲み口がスッキリ。舌の上でゆっくり転がしてから飲み干したいという酒。対して、この"LIVE"は雑味があって、少々、がさついた印象を免れない。一度、極上を味わってしまうと普通の味では満足できなくなるのが人間の性というものだ。   (2006.09.14)




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