独断的JAZZ批評 339.


SAYURI GOTO
このピアニストの持ち味は"SHINY STOCKINGS"のようなお洒落で粋な曲をナチュラルに、そしてシンプルに演奏するスタイルだと思う
"FLASHBACK"
後藤小百合(p), NAT REEVES(b) GENE JACKSON(ds)
2005年2月 スタジオ録音 (FEVER PITCH PRODUCTUION FPP6606)

1997年にニューヨークに渡り現在も活躍中と聞く
僕のお目当ては6曲目の"SHINY STOCKINGS"
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@"LITTLE NILES" 
A"WELL YOU NEEDN'T" 
B"AKIHA" オリジナルの各曲もそれぞれに味がある。
C"MIDGETS" 
D"FLASHBACK" 

E"SHINY STOCKINGS" 
この曲は実に思い入れの深い曲だ。今から35年も前、ジャズ喫茶に行くと良く掛かっていたアルバム、ELVIN JONESとRICHARD DAVIS(因みに僕の大好きなベーシスト)の"HEAVY SOUNDS"に入っていた曲だ。ジャケット・デザインが秀逸でタバコの煙と二人の横顔がグルーヴィさを醸し出していた。作曲はテナー・サックスで参加していたFRANK FOSTER。1曲目の"RAUNCHY RITA"とこの曲がお気に入りだった。この"SHINY SOCKINGS"は、実にアメリカ的な曲で、これはちょっとヨーロッパの感覚では真似できない曲だと思う。この曲が入っていたのでグッと背中を押された。
「良いテーマに良いアドリブあり」で、このアルバムのこの曲は「名演」と言えるだろう。素晴らしい演奏だ。注文したときにはここまでは期待していなかった。このアルバム中、群を抜いて良い演奏だ。演奏スタイルは極めてシンプル。後藤のピアノはナチュラル・アンド・シンプルでほとんどが右手のシングルトーン。左手のバッキングも必要最小限。何やらRED GARLANDのピアノから音符の数を少なくした感じだ。リズム隊も4ビートを刻む以外にほとんど装飾らしいものを入れない。せいぜい、最後に4バースを決めるくらいだ。このシンプルな演奏が実にいいのだ。何回聴いても飽きることがない。テーマの良さとアドリブの良さが堪能できる。アルコールでも口にしつつ、指でも鳴らして聴いて欲しい。

F
"NIGHT, NEVER END" ベースの定型パターンをバックにシンプルに歌う。ピアノのタッチが綺麗で気持ちよい。
G"MANTECA" 
H"BERKSHIRE BLUES" 
I"I MISS YOU" 軽いボサノバ調。これも「あり」だけど、本質ではない。
J"FLASHBACK(reprise)" 

後藤小百合というピアニストは将来が楽しみだ。アドリブ・センスが良い。最近は男勝りにガンガン弾く女性ピアニストも散見されるが、女性には女性の弾き方があっていいと思う。このアルバムには沢山の顔を見せようという意図があって、あれもこれもが詰まっているが、初のリーダーアルバムとなれば、ある程度,、仕方のないことと許せる。そういう意味で、曲によって落差はある。
RANDY WESTON作の@やH、THELONIOUS MONK作のA、GILLESPIEのGといった灰汁の強い曲よりはオリジナルの
BDFIの方が良く似合う。
でも、このピアニストの持ち味は"SHINY STOCKINGS"のようなお洒落で粋な曲をナチュラルに、そしてシンプルに演奏するスタイルだと思う。今後が楽しみな女性ピアニストがまた一人増えた。兎に角、僕としては"SHINY STOCKINGS"のピアノ・プレイを鑑として、今後もシンプルなシングル・トーンで酔わせて欲しいと思ったものだ。更なるランク・アップを期待して、星、4つ半とした。   (2006.05.13)