ANTONIO FARAO
良いピアノ・トリオというのは必ずと言っていいほど、3者の気力、体力、能力が充実し、拮抗しているものだ
"TAKES 0N PASOLINI"
ANTONIO FARAO(p), MIROSLAV VITOUS(b), DANIEL HUMAIR(ds)
2005年5月 スタジオ録音 (CAMJAZZ CAMJ 7779-2)
既に紹介したANTONIO FARAOの2枚のアルバム(JAZZ批評 97.と 254.)は僕にとって、今ひとつの物足りなさを残していたが、このアルバムは今までの不出来を払拭するに足りる素晴らしい仕上がりとなっている。
このアルバムは年末ぎりぎりに輸入されたようだ。従って、試聴する間もなく購入したのだが、その決め手となったのがMIROSLAV VITOUSの参加だ。きっと、何かが起こると思った!
このアルバムはイタリアの脚本家、映画監督、批評家として幅広い活動をしたPASOLINIへの没後30年のトリビュート・アルバムでもある。
ベーシスト、MIROSLAV VITOUSの参加は明らかにFARAOの演奏に強い刺激を与えている。
VITOUSといえば、1968年、弱冠19歳でCICK COREAのデビューアルバム(JAZZ批評 1.)に参加して世間をあっと言わせた。その後、1989年にはSTEVE KUHNのアルバム(JAZZ批評 82.)では絶妙、華麗なるベース・ソロを披露している。最近では自らのリーダー・アルバム(JAZZ批評 159.)を発表し、その健在振りをアッピールしている。
今回も強靭でアグレッシブなピチカートで圧倒し、強烈な刺激をFARAOに与えている。これにヨーロッパのドラムスの重鎮、HUMAIRを加えたピアノ・トリオは濃密で分厚い演奏で聴くものを魅了するに違いない。3者がインスパイアーし合い、活き活きとした丁々発止の演奏を堪能頂きたい。C、F、G、HがFARAOのオリジナル。
@"MAMMA ROMA Cha Cha Cha" VITOSUに触発され、活き活きとしたFARAOがここには居る。VITOUSのベースは格が違う。特筆すべきはHUMAILのドラミング!繊細にして豪胆なドラミングがこの曲のみならず、全編にわたって満喫できるはず!
A"MAMMA ROMA Stornello" 嬉々としてHUMAILが太鼓を叩く。実に刺激的な演奏だ。
B"UNA VITA VIOLENTA Serenata Cha Cha Cha" いやあ、最高だね!ほとばしるエネルギー!
C"Medea" しっとりバラード。VITOUSのハイトーンでの強烈なピチカートが印象的。
D"PORCILE Julian e lda"
E"PORCILE Percorso malinconico"
F"Teorema" クラシカルなテーマだが、アドリブはギンギンギラギラ!長めのドラム・ソロの後にベース・ソロが配置されている。
G"Stella" FARAOのピアノも実にアグレッシブ。
H"Ocdipus" 活き活きと弾きまくるFARAO。
I"UNA VITA VIOLENTA Irene" 丁々発止のインタープレイ!
J"UNA VITA VIOLENTA Theme song" 最後を締めるしっとり系バラード。決して甘さに流されない、歌心溢れる演奏。素晴らしい!WONDERFUL!BRAVO!
この3人によるトリオ・アルバムが今後も続いてくれれば嬉しい。やはりピアノ・トリオというのは3人のプレイヤーがインスパイアーし合って丁々発止の演奏が聴けるのが魅力なのだ。だから、3者の力量も充分であることが必要だ。良いピアノ・トリオというのは必ずと言っていいほど、3者の気力、体力、能力が充実し、拮抗しているものだ。ジックリと時間を掛けて味わって欲しいアルバムだ。
FARAOにとっても捜し求めていた最良の相棒を得たのではないか。この3人のプレイヤーによる次回のアルバムを期待しながら、 「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しよう。 (2006.01.08)
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