主にベースと諸楽器とのインタープレイが中心となっている。緊迫感と躍動感に満ちた音楽性の高い演奏だ。
"UNIVERSAL SYNCOPATIONS"
MIROSLAV VITOUS(b), JAN GARBAREK(ss,ts), CHICK COREA(p), JOHN McLAUGHLIN(g), JACK DeJOHNETTE(ds), [A〜C:WAYNE BERGERON(tp), VALERIE PONOMAERV(tp,flh), ISAAC SMITH(tb)]
2000年3月〜2003年3月スタジオ録音(ECM UCCE-1034)


MIROSLAV VITOUSと言えば、CHICK COREA "NOW HE SINGS, NOW HE SOBS"だ。1968年録音のこのアルバムを初めて聴いた時、僕はぶっ飛んでしまった。このときベースで参加したVITOUSは弱冠19歳だったという。チェコスロバキアの出身でこのアルバムで一躍脚光を浴びた。若干、音がダボつき気味ではあったがドライブ感とスピード感のあるベースを弾いて僕らを驚かせた。それ以降、COREAとは何回かトリオを組んでアルバムを残している。
また、JAZZ批評 82.のSTEVE KUHN "OCEANS IN THE SKY"の"DO"では歌心溢れる素晴らしいベース・ソロを披露している。
VITOUSにとって、このアルバムは11年ぶりの作品だという。今や54歳となり円熟味を加えたVITOUSの良く歌うベースが聴ける。

CHICK COREA。僕は、このCOREAの"NOW HE SINGS ・・・・"が好きだ。これを聴いてジャズにのめり込んだと言っても過言ではない。しかしながら、それ以降のCOREAには不満だ。不満だらけだ。結局のところ、デビュー・アルバムを超えないまま終わってしまうのではないかと危惧している。35年経った今もって、古さを感じさせない"NOW HE SINGS ・・・・"は世に残るピアノ・トリオの大傑作であると今も思っている。因みに、このJAZZ批評の最初のページをこのアルバムが飾っている。(JAZZ批評 1.
今回のアルバムでは脇役に徹したCHICKが素晴らしい。

JACK DeJOHNETTE。現代屈指のドラマーといえるだろう。KEITH JARRETT TRIOでの活躍をみれば一目瞭然だ。何といっても、歌心溢れるドラミングが最高。この人のフォー・ビートはそれだけで躍動感が湧いてくる。

JAN GARBAREK。ノルウェイ生まれの鬼才。音符過剰にならない「間」を持ったサックス・プレイヤーだ。実に渋い!!

JOHN McLAUGHLIN。イギリス生まれのギターリスト。丁度、この人の新譜"THIEVES AND POETS"を手に入れたので次回紹介したいと思う。

国境を越えた一流どころが集まったが、良くありがちな顔見世興行的な色彩はない。
このほかに
A〜Cはブラスセクションが3人追加されている。

@"BAMBOO FOREST" 軽快なリズムに乗るが、何故か神秘的、幽玄的。
A"UNIVOYAGE" DeJOHNETTEの素晴らしいドラミングが堪能できる。10分を超える演奏。
B"TRAMP BLUES" なかなかグルーヴィな曲。ベースとテナーサックスのインタープレイ。
C"FAITH RUN" ここではベースとギターのインタープレイ。
D"SUN FLOWER" CHICKの美しいピアノがキラリ。そこにテナーサックスが絡む。
E"MIRO BOP" ドラムス、ベース、ピアノ、テナーサックスによるアップテンポの演奏。
F"BEETHOVEN" ベースとソプラノサックスのインタープレイ。
G"MEDIUM" ドラムのリズムに乗ってベースが唸る。
H"BRAZIL WAVES" ブラジリアン・リズムに乗ったソプラノサックスの美しいサウンド。

全曲、VITOUSのオリジナル、もしくは競作である。曲想はクールで透明感があるが、ホットなサウンドも加味されている。主にベースと諸楽器とのインタープレイが中心となっている。緊迫感と躍動感に満ちた音楽性の高い演奏だ。聴けば聴くほど味わい深くなる。
「manaの厳選"PIANO & α"」の中に1枚くらいこういうアルバムがあってもいいだろう。(2003.10.19)



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MIROSLAV VITOUS

独断的JAZZ批評 159.