"PUTTIN' ON THE RITZ"
STEPHEN ANDERSON(p), LYNN SEATON(b), JOEL FOUNTAIN(ds)
2002年5月 スタジオ録音 (NAGEL HEYER CD 099)
アルバム・ジャケットの中央にいるのがベースでリーダーのLYNN SEATONだ。熊のようなひげ面で、一見、豪腕ベーシストという印象を持つが、演奏は意外と器用なタイプで饒舌である。1957年生まれというから録音時、45歳ということになる。ピアノとドラムスは、見る限り、若手のようだが切れの良い演奏をしている。
@"BERNIE'S TUNE" この曲といえば、“HERE COMES EARL"FATHA" HINES”(JAZZ批評 44.)を思い出す。若かりし頃のRICHARD DAVISの強靭なピチカートから生まれる伸びやかで艶のある「唸る」ベースが堪能できた。ELVIN JONESとのマッチングもグッドだ。
このアルバムのSEATONもドライブ感のあるプレイを聴かせてくれるが、音色が柔らかい。アンプの依存度が少し高いのでこういう音色になるのかもしれない。SEATONはなかなかのテクニシャンで柄に似合わず速弾きも披露している。
A"GONE WITH THE WIND" 長めのピアノのイントロからテーマに入る。このイントロは余分だ。ストレートにテーマに入った方が良かったかも。テーマでは軽快な4ビートを刻み、スイング感たっぷり。長めのベース・ソロでは饒舌振りを発揮している。
B"MOOD INDIGO"
C"PRETENDING"
D"INDIANA" 2ビートから超高速の4ビートへ。凄いのはこの速さでアルコ弾きをすることだ。まるで、バイオリンを弾くかの如く。こういうアルコは初めて聴くけど、やはり、早く弾けばいいってモノじゃない。命名、「熊男の独楽鼠奏法」
E"NATURE BOY" この曲もSTEFANO BOLLANI(JAZZ批評 210.)やMARTI VENTURA(JAZZ批評 287.)の名演があるので、聴き比べてみるのも良いだろう。
F"MOANIN'" テーマをスキャット紛いの濁声で歌う。ベースとスキャットのユニゾン。これは、1回聴くと次は御免だ。
G"LONDONDERRY AIRE" 別名"DANNY BOY" しっとり系トラディッショナル・フォークソングだ。最後のテーマはテンポにアレンジを加えている。まっ、懲りすぎという印象の方が強い。
H"PUTTIN' ON THE RITZ" ここでもバイオリンのようなアルコ弾きが聴ける。
全体的にアレンジに懲りすぎの印象が否めない。凝った割には軽い感じ。逆に、凝ったから軽いのかもしれない。3人の実力のほどは充分に伺えるので、何も、ここまで凝る必要はなかった。何となく深みのない軽さが目立ち、繰り返して何回も聴こうとは思わない。
最近のアメリカのジャズを象徴するかのような演奏である。ジャズはその一瞬を切り取り、ライヴさながらに1回聴けば良いという方にお奨め。
というようなことを言いつつ、2005年も暮れていく。今年は74のレビューを書いた。月に6枚のペースだった。来年も夢中にさせてくれるようなアルバムが出現してくれるだろうか?期待を込めて2005年の筆を置くことにする。
またのご訪問をお待ちしております。 (2005.12.30)