LARRY FULLER
久しぶりに聴くアメリカの正統派ジャズという感じがした
"EASY WALKER"
LARRY FULLER(p), RAY BROWN(b), JEFF HAMILTON(ds)
1998年8月 スタジオ録音 (FOAJAZZ FRGJ-2003) 


このアルバムは再発盤で、ジャケットが変わった。国内盤が新譜で登場したときは女性の脚線美を強調した、このアルバムの音楽とは何の関係もないデザインであった。多分、アイ・キャッチャーとしてのインパクトを目指したのであろう。再発盤になって、少し穏やかなデザインになったが相変わらず演奏されている音楽とは何の関係もない。面白いことに輸入盤は、このアルバムのリーダーであるLARRY FULLER、その人のアップ写真である。日本盤はどうしてこういうことになってしまうのだろう。リスナーが欲しているからか?????疑問符を5ヶくらい点けただけでは未だ足りない!

今は亡きRAY BROWNは1926年生まれと言うから、この時、72歳になっていたか。1959年に録音したJUNIOR MANCEとのトリオ盤"JUNIOR"(JAZZ批評 57.)は今もって瑞々しく、僕の愛聴盤である。その時とは約40年の隔たりがあるので、往年の力強いピチカートは若干、くぐもって聴こえる。72歳ともなれば握力が落ちてくるのはある程度、仕方のないことだろう。
JEFF HAMILTONはブラッシュ・ワークもスティックも軽快で淀みがないが、御大・RAY BROWNに少し遠慮したか?

@"GROOVE YARD" 
テーマと言い、4ビートのシンバリングと言い、ベースのウォーキングと言い伝統のアメリカのジャズ再現という感じ。
A"IN LIKE FLYNN" 
FULLERのオリジナル。これまた伝統的なと言いたくなるような佳曲。
B"HYMNE A L'AMOUR" 
邦題「愛の賛歌」。目新しさを演出するために入れたご愛嬌と言ったところか。

C"RAY'S IDEA" 
D"EASY WALKER" 
タイトル曲になっているBILLY TAYLORのオリジナル。このBILLY TAYLORのアルバムはいまだ1枚もアップしていないので、いつか紹介したい。なかなか味のある良いピアニストだ。この曲の場合は、先ず、曲が良いね。まあ、指でも鳴らしたら、ついでに、アルコールが欲しくなってしまう。

E"CARAVAN" 
ピアノ・ソロ。これだけのメンバーを揃えながら、かえって、ソロのほうが活き活きしているというのは皮肉だ。
F"COMPASSION" 
G"HONEY SUCKLE ROSE" 
H"CONSIDER" 
I"CANDY'S BLUES" 
最後のテーマの前にHAMILTONの軽快なブラッシュ・ワークが用意されている。

久しぶりに聴くアメリカの正統派ジャズという感じがした。しかし、豪腕サイドメンを揃えた割りに毒気のない演奏である。FULLER、その人の演奏スタイルがそうさせたのだろうか?それとも、超豪華サイドメンに遠慮したか?RAY BROWNもJEFF HAMILTONもよくサポートしているとは思うのだが、これだけの面子、期待した割には毒気が抜けていて物足りないという印象も拭いきれない。
まさか国内盤が新譜で登場した時のジャケット・デザインに合わせて、明るく健康的なジャズを目指したわけでもなかろうに。
そうは言ってもこれはアメリカの伝統を継承した良いアルバムだと思う。   (2005.08.07)



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独断的JAZZ批評 286.