TONU NAISSOO
実力の拮抗するベースとドラムスを従えたトリオをもう1回聴いてみたいと思った
"WITH A SONG IN MY HEART"
TONU NAISSOO(p), JORMA OJANPERA(b), PETTERI HASA(ds)
2003年2月 スタジオ録音 (ATELIER SAWANO AS 046) 

今回のピアノ・トリオはエストニアだという。エストニアってどこにあったっけ?というような認識しかないのでは申し訳ない。早速、ネットで調べてみた。ロシア連邦とラトビアに接しており、海を隔ててフィンランドの対岸にある。
もう「JAZZに国境はない時代」になったのだろう。かつて紹介したアルバムの中でも、メキシコ人ピアニストのMARK AANDERUDの"TRIO '02"(JAZZ批評 126.)やアルゼンチン・ピアニストのGUILLERMO ROMEROの"TRIO"(JAZZ批評 251.)は印象深いアルバムだった。
今回は澤野工房が世界を股に駆けて探し出したのであろう。
ジャケットがいいね。日本の大手レコード会社では何の脈絡もないヌードまがいのジャケットを多用しているが、それに比べると救われる想いだ。

@"ISN'T IT ROMANTIC" 一聴、ベースの増幅が大きくて締りがない。まるでエレキ・ベースだ。しかも、ベース・ソロがシドロモドロ。実力以上のことをやろうとして陥穽に陥った感じ。音程が外れて不快だ。1曲目にこれが入っているので全体の印象をすこぶる悪くした。ドラムスも上手いとは言い難い。ドタバタと耳に障る。
A"MY FAVORITE THINGS" これもベース・ソロが長い。ドラムスもバタバタやるんだよね。ピアノが頑張ってんのに、惜しいなあ。

B"YOU ARE TOO BEAUTIFUL" ここでも配慮の利かないドラムスがドタバタやってくれる。
C"WITH A SONG IN MY HEART" ベースもドラムスもかまないイントロがいい。
D"SPRING IS HERE" ここまでの5曲がRICHARD RODGERSの書いた曲。

E"THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE" 邦題「昔は良かった」 これが入っていて良かった!僕もこの演奏を試聴して購入を決めたのだが・・・。グルーヴィなブルースでアルバム全体を引き締めた。ノリノリの演奏でドタバタ・ドラムスもモタモタ・ベースも気にならない。
F"CLOSE YOUR EYES" つまらないドラムスのソロが余分だ。
G"CON ALMA" 
H"IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING" 美しくも躍動感溢れるバラード。特に前半のピアノ・ソロはいいね。

このTONU NAISSOOというピアニストは美しいタッチと切れのある演奏でなかなか良いと思う。しかし、残念ながらリズム陣が弱い。配慮の利かないドラムスだったり、シドロモドロのソロをとるベースだったりして、ピアノには気の毒としか言いようがない。
ピアニストは逸材だと思う。実力の拮抗するベースとドラムスを従えたトリオをもう1回聴いてみたいと思った。例えば、JESPER LUNDGAARD〜ALEX RIELのリズム陣を従えたら、これは凄いピアノ・トリオになると思う。   (2005.05.27)



独断的JAZZ批評 272.