KAI BUSSENIUS
非常にオーソドックスな演奏スタイルで、奇を衒ったり「受け」を狙ったりということがない
"THIS TOWN"
MICHAEL WOLLNY(p), LUCAS LINDHOLM(b), KAI BUSSENIUS(ds)
2003年10月 スタジオ録音 (MONS RECORDS MR 874 371) 

ドイツのハンブルグで吹き込まれたドラマーがリーダーのピアノ・トリオ盤。
ドイツというとJOERG REITER(JAZZ批評 66.87.)を思い起こすが、このピアニストは音に透明感があり、ドライブ感とスピード感のある演奏が印象的だった。
翻って、このKAI BUSSENIUSというドラマーはジャケットを見る限り非常に若い。(恐らく20歳後半から30歳前半)グループとしてのまとまりもよく、基本に忠実な演奏をしている。派手さはないが堅実で好感の持てるアルバムということで5つ星を献上した。
Bを除く5曲が有名なスタンダード・ナンバーであと1曲がブルースという構成になっている。オリジナルがあと1〜2曲入っていれば更に良かった。唯一のオリジナルB"THIS TOWN"はアルバム・タイトルにもなっているがなかなか良い曲で、コンポーザーとしてのセンスも良い。それだけに、オリジナルが1曲だけというのはちょっと残念だ。

@"ALONE TOGETHER" 3人によるフリー・テンポのインタープレイで始まる。2コーラス目からイン・テンポに移行して行く。この曲は変則的な44小節の曲であるが、楽曲通りにコード進行していく。4ビートを刻むベースラインも分かりやすく、アマチュアの方が手本とするには良いかも知れない。
A"I HEAR A RHAPSODY" この曲を聴くと、僕はCHICK COREA(JAZZ批評 50.)の演奏を思い出す。これに負けず劣らずのドライブ感溢れる演奏を披露している。こちらの演奏スタイルはあくまでもオーソドックス。

B"THIS TOWN" BUSSENIUSのオリジナル。美しく深淵な曲想の曲。3つの楽器のバランスも良く聴き惚れてしまう。
C"ON GREEN DOLPHIN STREET" 長めのドラム・ソロからテーマに入る。全員が力強い演奏に終始。最後にもう1回ドラムスのソロを経てテーマに戻る。
D"LOVER MAN" ピアノのソロに始まり、やがて、イン・テンポに。ドラムスのシンバル・ワークが効果的。ベース・ソロも良く歌っている。こういうスローの曲にあっても指を鳴らしたくなる躍動感があるのは心地よい。

E"STRAIGHT NO CHASER" T.MONKの書いたブルース。ミディアム・テンポでグルーヴィに歌う。
F"MY ROMANCE" ピアノ・ソロで始まり、イン・テンポでベースとドラムスが合流。美しいピアノの音色、サクサクとしたブラッシュからビシビシと刻むスティック、太いベースのウォーキング。心地よいスウィング感に身を任せよう。

Eの"STRAIGHT NO CHASER"を除く6曲全てが7分〜9分の演奏時間になっている。僕にとっては丁度良い長さ。そのせいで収録曲は少な目の全7曲。
このアルバム、ピアノ、ベース、ドラムスのバランスも良く、力量も拮抗しているので良いアルバムに仕上がった。非常にオーソドックスな演奏スタイルで、奇を衒ったり「受け」を狙ったりということがない。若干、教科書的な演奏スタイルで、その分、少し物足りないと感じる人もいるかも知れない。しかし、躍動感、緊密感、美しさに溢れており、充分満足できる出来映えといえるだろう。
僕としてはオリジナルをもう1〜2曲入れて欲しかった。最近、スタンダード・ナンバーのオンパレード的なCD制作が目につくだけに、こういうセンスある曲を書けるプレイヤーにはオリジナルを増やしてもらいたいものだ。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.01.04)



独断的JAZZ批評 240.