REITER'S WORLDは
清流あり、激流あり、濁流ありの
まるで川の流れのようだ
"CAPRICE"
JOERG REITER(p) 1986年スタジオ録音(JETON JET 60 023)

左手が躍動感のあるアルペジオを弾き出したその瞬間からREITER'S WORLDに引きずり込まれていく。
ピアノ・ソロ・アルバム。全9曲の内、"MY FUNNY VALENTINE"を除く全ての曲がREITERのオリジナル。

僕は、ジャズ批評 66.の"SIMPLE MOOD"でJOERG REITERの虜になった一人だ。あのスピード感とドライブ感は圧倒するものがあった。
あの録音から1年後の1986年録音。HMVのネット・ショッピングにラインナップされていたもう1枚がこのCD。既に、ミュージシャンとしては引退しているそうなので、今後は多くの作品は望めないだろう。前作の大ヒットを受けて、この直輸入盤が発売されるようになったのだろう。
ヨーロッパのジャズが頻繁に紹介されるようになったのはECMレーベルやSTEEPLE CHASEレーベルが発端だろう。そういう意味ではまだまだ多くのミュージシャンを発掘できる素地が残っているかもしれない。

REITERのピアノには透明感がある。澄んだ水のようでもある。そのことは2曲目の"WINTERFOREST"や3曲目の"KALIMA"といった美しい曲に良く表れている。ただ、美しさにだけに流れないところがこのピアニストの良いところ。力みなぎるフレーズが上手く配置されている。緩急、強弱、動と静といったコントラストの使い分けが非常に上手く、清流あり、激流あり、濁流ありのまるで川の流れのようだ。

2曲目の"WINTERFOREST"のような清冽なテーマの曲であってもアドリブになると甘さに流されないガッツと躍動感が信条だ。お奨めの1曲。
5曲目の"ON MY WAY HOME"においても同様なことが言え、美しいテーマとは別に情念的な力強いアドリブが展開される。
一転して7曲目の"CHOCOLATE"はあま〜いタイトルとは異なり、スウィング感満載のハッピーな気分になれる曲。こうしたメジャーの曲においてはブルース・フィーリングたっぷりにおおらかに歌っているところが流石だ。
最後は唯一のスタンダード・ナンバー"MY FUNNY VALENTINE"
超スローでフリーな演奏で始まるが、徐々にテンポが生まれて来て、ワーッという感じでインテンポになるのかと思うと、そうはならない。この辺が小憎らしい。

JOERG REITERのような優れたピアニストが今の今まで埋もれていたヨーロッパ・ジャズの底力を侮ってはいけない。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。    (2002.08.10)



JOERG REITER

独断的JAZZ批評 87.