ALAN BROADBENT
これはピアノ・トリオではない
ベースのワンマン・トリオである
"'ROUND MIDNIGHT"
ALAN BROADBENT(p), BRIAN BROMBERG(b), JOE LABARBERA(ds)
2004年8月 スタジオ録音 (KING RECORDS KICJ 481) 


このアルバム、初詣の帰りに寄ったHMVの店頭に試聴盤として陳列されていた。今回はメンバーが凄い。ベースのBRIAN BROMBERGは今やベース界きってのテクニシャンだし、JAZZ批評 29.のGONZALO RUBALCABAとの共演でも豪腕振りを証明済みだ。ドラムスのJOE LABARBERAは古くはBILL EVANSの最後の録音(JAZZ批評 142.)に付き合っている。
購入のポイントはGの"THE MAN I LOVE"だ。試聴をする際はなるべく自分の知っているスタンダード・ナンバーを中心に聴くことにしている。かつてないアップテンポの演奏に度肝を抜かれた。それで衝動買いした。今回のアルバムはベースのBROMBERGの影響が強く出ている。穏やかなBROADBENTの演奏の中に豪腕のBROMBERGが土足で入り込んできたような異質なものの混合、その結果得られる嘗てない新鮮な響きといったところか。

と・・・・ここまで書いて、はたと思った。何回も聴いているうちにこれは本当に魅力的なアルバムなのだろうかと。繰り返し聴くたびにその評価が落ちていくというのが実感なのだ。
その理由
1.これはピアノ・トリオではない。ベースのワンマン・トリオである。録音もベースがメインでピアノもドラムスも脇役である。完全に食われている。
2.1曲ごとにベースのソロがフィーチャーされているが、これが皆「独りよがりの弾き過ぎ」なのだ。JOHN PATITUCCIなどもそうだが、往々にしてテクニシャンの陥る罠と言わねばなるまい。ベースの超絶技巧を「凄い!」と思うこととピアノ・トリオの感動を味わうこととは違うのだ!
3.BROADBENTのような穏やかなピアニストがわざわざ選ぶべ-シストとは思えない。今やピアノ・トリオのベーシストとして引っ張りだこのLARRY GRENADIERと比較してみるとBRIAN BROMBERGをピアノ・トリオのベーシストとして選択する理由が分からない。このベーシストはベース・ソロ・アルバムを出しているのが一番似合っているのではないか、もしくは、トリオ演奏のときはベース・ソロをフィーチャーしないことだろう。


@"GROOVIN' HIGH" D.GILLESPIE作の陽気な佳曲。
A"SERENATA" 
B"LAMENT" J.J.JOHNSONの書いた美しいバラード。
C"DIE VEREINBARUNG" 
D"JOURNEY HOME" 
E"I'M OLD FASHIONED" 
F"'ROUND MIDNIGHT" あまりにも有名なT.MONKの書いたバラード。
G"THE MAN I LOVE" GEORGE GERSHWINの名曲。

このCDがライヴのようにその刹那を切り取る音楽で、1回だけ聴きたいと言うならば「これもあり」だろう。しかし、貴方が5年、10年と長きにわたって聴きたいと思うならお奨めしない。聴けば聴くほどBROMBERGのベースが鼻につくからだ。   (2005.01.05)



独断的JAZZ批評 241.