LARS JANSSON
ちょっと美味しいくらいではもう満足は出来ない
"I AM THAT"
LARS JANSSON(p), LARS DANIELSSON(b), ANDERS KJELLBERG(ds)
2004年9月 スタジオ録音 (SOL IG -0017) 

例えば、貴方が子供だったとして、ここにキャンディの詰まった袋がある。Aの袋にはちょっと美味しいそこそこのキャンディが詰まっている。Bの袋には天にも昇るような今まで食べたことのない美味しいキャンディが入っているが、その一方で、地獄のように不味くて嫌いな味のキャンディも入っている。
さて、貴方はどちらの袋を取りますか?

Aと答えた方にはこのアルバムを勧めます。Bと答えた方にはこのアルバムを勧めるのに躊躇します。僕にとってはBのアルバムは前々回掲載のHELGE LIENのアルバムがそれにあたる。天国と地獄。天国を覗いてみたいという誘惑に勝つことは出来ない。ちょっと美味しいくらいではもう満足は出来ない。

翻って、このアルバム。JAZZ批評 106.の"HOPE"はなかなか良いアルバムだった。あれから5年、16ビートや5拍子、モードにも挑戦し、ハード・ドライブの演奏もある。そして、どの曲も実にそつがない。そつはないが心を動かすものもない。躍動感も緊密感も今ひとつ。美しさもただメロディラインが美しいというだけでは感動は得られない。全て70点〜80点近辺。大外れもない代わりに大当たりもない。ややもするとBGMに成り下がってしまう。
禅や瞑想に耽るのもいいが、理屈よりも感性に訴える演奏をして欲しいものだ。

@"I AM THAT" 
A"IT'S ALREADY THERE" 
B"THE SKY IS THERE" 
C"NON-DOING" 
D"APPLETON" 
E"GIVE ME FIVE" 5拍子を違和感なく演奏している。
F"TIME TO BE ALONE" 
G"REBORN EVERY MOMENT" ハード・ドライブの曲。ドラミングに???
H"THE INNER CHILD" 
I"DIMINISHED" モード手法。
J"SITTING SILENTLY"  結局、こういう曲が一番、合っているのかも。
K"LATOUR" なかなかノリ良い演奏を聞かせる。
L"REMEMBERING" 

このトリオは17年以上の不変のトリオだという。ANDERS KJELLBERGとは1979年のトリオ結成以来の付き合いということは25年の歳月を伴にしてきたわけだ。が、その割には、このドラマーには?マークがつく。どうも配慮が足りないみたいだ。それとも録音のバランスが悪かった?
前回の"HOPE"と比べて新しい試みを感じるが、如何せん、毒気がないのが欠点かもしれない。ほんの少しの灰汁とか毒があるともっと深みが出てくると思うのだが、どうだろう。   (2004.11.07)



独断的JAZZ批評 230.