JUTTA HIPP
まさに1956年の空気を伝えるアルバム
"JUTTA HIPP AT THE HICKORY HOUSE VOL .1"
JUTTA HIPP(p), PETER IND(b), ED THINGPEN(ds)
1956年4月 ライヴ録音 (BLUE NOTE TOCJ-6439) 

まさに1956年の空気を伝えるアルバム。
ドイツ生まれのJUTTA HIPPがイギリス生まれのPETER INDとアメリカ生まれのED THINGPENの二人とトリオを組んだライヴ盤。少しざわついたHICKORY HOUSEの雰囲気の中で吹き込まれているが、それがかえって、その時代のその雰囲気を感じさせる面白さがある。
ジャズ評論家のLEONARD FEATHERがアメリカに呼び寄せ、録音したいわくつきのアルバム。

先ず印象に残るのがリズム陣の堅実なサポート。ベースが唸り、太鼓がキープ。一体感が素晴らしい。こういうサポートがあれば、ピアノに安心して没頭できるというものだ。
HIPPの曲目紹介の優しい声が、何故か哀しい。

@"INTRODUCTION BY LEONARD FEATHER" ご丁寧にも、彼の有名なLEONARD FEATHERの紹介付きと来たもんだ。
A"TAKE ME IN YOUR ARMS" 優しい顔して、バップしている!
B"DEAR OLD STOCKHOLM" 哀しげな曲目紹介の声に続くその演奏もミディアム・スローの哀しい演奏。
C"BILLIE'S BOUNCE" C.PARKERの書いたブルース。この曲としてはゆっくり目の演奏。INDのベース・ソロは良く歌っている。僕の記憶だと、このベーシスト、ベースの教則用LPも出していたと思うのだが、もしかすると勘違いかもしれない。見事なベース・ワークだ。

D"I'LL REMENBER APRIL" 軽快にスウィング。ドラムスとベースの一体感が良いね。ピアノも気持ちよさそう。
E"LADY BIRD" INDのウォーキング〜4小節交換を経てテーマに戻る。
F"MAD ABOUT THE BOY" THINGPENのブラッシュ・ワークが快い。
G"AIN'T MISBEHAVIN'" ここでもINDの良く歌うベース・ソロが堪能できる。

H"THESE FOOLISH THINGS" この名曲を甘さに流されず、単音勝負。
I"JEEPERS CREEPERS" 
J"THE MOON WAS YELLOW" 

1956年という時代背景からしてドイツ人の女性ピアニストがアメリカでバップを演奏すること自体が珍しかったろうし、それ故に、LEONARD FEATHERがどうしてもアメリカに連れて行きたかったのだろう。
堅実なサポートにより質の高いアルバムとなった。当時の希少性と相俟って、ピアノ・トリオ・ファン、垂涎のアルバムとなった。今や、このアルバムがキャンペーン価格で1,500円で買えるとは有難いことだ。   (2004.10.23)


独断的JAZZ批評 227.