JOE HAIDER
敢えて言うと、もう少しの躍動感が欲しい
"A SUNDAY IN SWITZERLAND"
JOE HAIDER(p), GIORGOS ANTONIOU(b), DANIEL AEBI(ds)
2004年2月 スタジオ録音 (JHM RECORDS 3633) 
                    
ドイツ人のJOE HAIDERが若手のサポートを選択してスイスで録音したトリオ・アルバム。ベースもテクニシャンだし、ドラムスも思い切りの良い演奏が印象的だ。リーダーがベテランでサポートが若手という組み合わせは概して良い。例えば、JAZZ批評 214.のJEFF HAMILTON、215.のALDO ROMANOと若手の組み合わせは何とも刺激的でプラス・アルファの魅力を引き出すことが出来た。
その逆が、JAZZ批評 211.のERIC REEDで、若手のリーダーがベテランのサポートを選んだ(押し着せられた?)ばかりに、むしろ、伸びやかさのない陳腐な印象ばかりが残った。
その点、JOE HAIDERはしっかりした若手のサポートを得て、思い切りの良い演奏を披露している。ジャズはこうありたい。プレイにベテランも若手もなく、お互いの魂をぶつけあてプラス・アルファの魅力を引き出して欲しいものだ。

@"A SUNDAY IN SWITZERLAND" イントロからテーマの合間に入るドラムスの「バシャン!」という2発の音が印象的。思い切りの良さが光る。その後、8ビートの軽快な曲想に変化する。灰汁のない透明度の高いピアノ演奏だ。ドラム・ソロを経てテーマに戻る。
A"ON GREEN DOLPHIN STREET" 言わずと知れたスタンダードナンバー。これもノリの良い演奏。アドリブにはいるとドラムスはチンチカ・チンチカと4ビートを刻み、ベースは図太くウォーキング。ベースのソロ〜ドラムスのソロを挟んでテーマに戻る。

B"DARK CIRCLE BLUES" グルーヴィなスローのブルース。2コーラスのベースによるテーマ演奏の後にピアノが歌う。ベース・ソロと続けてテーマに戻る。この曲は今までのイメージとは違って、実に泥臭いブルースになっている。ベースもゴリゴリと弾きまくる。

このアルバムではここまでの3曲が特に良いと思う。

C"RHYTHM'DIM" このテーマはひょうきんな曲。アドリブではミディアム・ファーストの4ビートを刻む。ドラムスのソロからベースのアルコ・ソロと続く。このアルコは躍動感がありなかなかの使い手だ。
D"KAREN'S BIRTHDAY" HAIDERの手になる美しいワルツ。
E"GROOVY TILL" 
F"FOR LINE" しっとりバラード。
G"SOME OTHER BLUES" JOHN COLTRANEの書いたブルース。

JHM RECORDSというのはJOE HAIDER MUSIC RECORDSの略らしい。このピアニスト、自分のレコード会社まで持っているとは!
で、このアルバムであるが、ベテランと若手のコンビネーションも良く大きな瑕疵もない。だけど、もうひとつ胸に響くものがない。1曲だけでも何回も繰り返し聴きたくなるような曲があれば、評価も一段と良くなるのだけど、それがない分だけ少し物足りなさが残る。
敢えて言うと、もう少しの躍動感が欲しい。   (2004.09.11)



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独断的JAZZ批評 218.