歯切れの良さといい、音の選び方といい、
本当に小憎らしいほど上手い!
オールラウンド・プレイヤーBARRONの真骨頂
"LEMURIA-SEASCAPE"
KENNY BARRON(p), RAY DRUMMOND(b), BEN RILEY(ds) 1991年1月録音

実は、新譜だとばかり思って注文した1枚。
名作"LIVE AT BRADLEY'S"(JAZZ批評 22.)と同じメンバーで録音されているので、てっきり新譜だと誤解してしまった。着いてみると1991年録音の再発盤だった。でも、これは「当り」だった。

流石、KENNY BARRONと言わざるを得ない。オールラウンド・プレイヤーの真骨頂。
こういう言い方をするといかにも器用貧乏のように聞こえるが、バロンの場合は例外だ。
幅広く何でもこなせるという意味では確かに器用ではあるが、どの演奏とってみても深みがある上に、快いスウィング感に溢れていて心底楽しめる。

このCDの場合は1、2曲を後回しにして3曲目から聴くのが良いのではないか。
2曲目の "ASK ME NOW" はピアノの低音部とベースのユニゾンで始まる、変わった印象の曲。誰の作曲かと思えば、何を隠そう、THELONIOUS MONK。さもありなん。納得だ。
テーマは非常に個性的。アドリブは真っ当、しかもバロン節。それでも後に回してテンション高めて聴いた方が良いだろう。それほどテーマがユニーク!

3曲目の"SWEET LORRAINE" は美しいミディアム・テンポの曲。軽やかに気持ちよくスウィングする。この辺の乗り方は歯切れの良さといい、音の選び方といい、本当に小憎らしいほど上手い。4曲目はカリプソ、7曲目がボサノバ。どちらも楽しめる演奏。全くもって小粋でお洒落なのだ。しかも、手抜きはない。
間に挟まれた5曲目がブルース・フィーリング溢れるスローのブルース。しかもピアノ・ソロ。こういうブルースを弾けるのは、今や、このBARRONかRAY BRYANT あたりに限られてくるだろう。

6曲目、8曲目がスタンダードの "HAVE YOU MET MISS JONES?" と "YOU GO TO MY HEAD"。前ノリのベースといい、軽いブラッシュ・ワークといい、全て快いスウィングのためにある。"YOU GO TO MY HEAD"のアドリブで、RILEYはスティックに持ち替えて快い4ビートを刻んでいく。シンバリングだけで周りを乗せてしまう。
ドラムスの基本は4ビートにあると僕は思っている。この4ビートを刻むだけでいかに周りを乗せるか?これこそ、良いドラマーの必要条件だ。そこから快いスウィング感が生まれてくるのだ。

何気ない1枚だが、肩肘張らず、リラックスしながらも、奥の深い、いつまでも飽きの来ないお奨めの1枚だ。   (2002.04.06)



.
KENNY BARRON

独断的JAZZ批評 61.