独断的JAZZ批評 955.

AKANE MATSUMOTO NEW YORK TRIO
松本茜の「色」って何色?
"MEMORIES OF YOU"
松本茜(p), PETER WASHINGTON(b), GENE JACKSON(ds)
2015年5月 スタジオ録音 (CONCEPT RECORD : CR03)

松本茜は初聴きである。本アルバムが5年ぶりの3枚目のリーダー・アルバムだという。随分長い時間が空いたものだ。今回はNEW YORK TRIOと銘打ってベースにPETER WASHINGTON、ドラムスに日米を股にかけて活躍中のGENE JACKSONが参加している。
山中千尋(JAZZ批評 113.)にしろ、アキコ・グレース(JAZZ批評 101.)にしろアメリカの一流ミュージシャンとの他流試合で腕を磨き、その後の活躍はご承知の通りだ。


@"MEMORIES OF YOU" 
イントロの後にアップ・テンポにシフトする。ベース〜ドラムスと繋いでテーマに戻る。あまり斬新さを感じさせない演奏で、ちょっと肩透かし。弾き倒さないと気が済まないのかも知れぬ。
A"LAURENTIDE WALTZ" 
松本が敬愛するOSCAR PETERSONの書いた曲。ワルツなのだけどユーモアとか剽軽さんが前面に出た演奏だ。特別音符過多というわけでもなく、愛らしい演奏だ。
B"GENTLE ART OF LOVE" 
これもPETERSONの曲だという言う。WASHINGTONの少々擦れすれ気味のベース・ソロで始まる。WASHINGTONのベース・ソロがもっと強いビートでガシガシ弾いてくれると良かった。迫力不足だし、枯れてきてる感じだね。エンディングは少々お粗末。
C"MOON RIVER" 別にテーマをそのままなぞる必要はないと思うけど、印象的には粗い。あくまでもハード・バッパーとしてのプレイスタイルなのだろう。ここでもベースがフィーチャーされている。その後のトリオは楽しげだが、もう少し色気があってもいいね。雲の合間にみえかくれするお月様のようだ。
D"JJ" 
超アップ・テンポ。PETERSONばりに良く動く指だ。ここでは迫力あるJACKSONのドラム・ソロが聴ける。
E"DANNY BOY" 
アプローチ的にはCの"MOON RIVER"に似ている。松本の手に掛かるとアイルランド民謡もハード・バップの好材料になるのだろう。実に、O. PETERSON的なプレイスタイルだ。いつまでもPETERSONのスタイルを踏襲していて良いのだろうか?
F"GOODBYE MR. MILLER" 一昨年亡くなったMULGREW MILLER(p)へのトリビュート・チューン。ミディアム・テンポの4ビート。このトラックに限らずベースのPETER WASINGTONに時間を割いているが、往年の冴えを感じない。ビートが弱くなり、アンプ依存になっているのが残念。最後は同じリフを繰り返しJACKSONのドラム・ソロで終わる。
G"HOMETOWN"
 松本の書いたオリジナル・バラード。18年間生まれ育った故郷、鳥取への優しく、切なく、懐かしい思いが伝わってくる。この曲こそ、松本の原点であり、人に感動を与える演奏ではないのだろうか?本アルバムの中で一番心に沁みた。何回も聴いていたい!

録音時間が合計で45分にも満たないというのはどういうことか?まるで、昔のLPレコード並だ。あと1〜2曲程度挿入されていても良かったと思うけど、どうだろう?プレスに値するトラックが録れなかったのだろうかと勘繰ってしまう。
一貫しているのはハード・バップスタイルだ。ピアノのプレイスタイルもO. PETERSONの影響を強く受けていると感じさせる。
それはそれでいいのだけど松本茜の「色」って何色?と思ってしまう。自然発生的に故郷への想いを綴ったGの"HOMETOWN"こそ松本カラーだと思うのだけど、どうだろう?   (2015.08.26)

試聴サイト:
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/1006736271



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