独断的JAZZ批評 913.

ROBERT BALZAR TRIO
チェコと言えば、ジャズ・ベーシスト大国
"VUJA -DE"
JIRI LEVICEK(p), ROBERT BALZAR(b), JIRI SLAVICEK(ds)
2013年4月 スタジオ録音 (RKBC 1072014002)

ROBERT BALZAR(b)がリーダーとなる本アルバムは前作"DISCOVER WHO WE ARE"(JAZZ批評 831.)と録音年月日が全く同一である。2枚分を同時に録り溜めたのであろう。だから、録音エンジニアもJAMES FARBERであることも変わらない。
前作がオリジナル中心のアルバムだったのに対し、本アルバムはスタンダードやカバー曲、チェコのフォークソングにも挑戦している。アルバム編集上の差別化なのだろう。
BALZARは本アルバムを遡ること8年前、"OVERNIGHT"(JAZZ批評 590.)というアルバムも出しているが、これも素晴らしいアルバムだった。この時以降、ピアニストはJIRI LEVICEKに替わっている。


@"ALL BLUES" 最初の数小節を聴いただけで、これは5つ星間違いなしと確信させてしまうワクワクするようなイントロで始まる。グルーヴィだ!M. DAVISの書いた曲。DAVISの最高傑作と言われる"KIND OF BLUE"(JZZ批評 70.)に挿入されていた曲だ。
A"DOBRU NOC" 
いかにもフォークソングらしいメロディライン。優しさと切なさに溢れたテーマだ。アドリブに入ると一転してグルーヴ感溢れた演奏にシフトする。BALZARのベース・ソロがグルーヴィ!
B"VUJA-DE" 
BALZARのオリジナルだからってわけではないだろうが、ベースが大きくフィーチャーされる。曲の終盤になって盛り上がりを見せる。
C"SMILE" 
CHARLIE CHAPLINが書いた曲だけど、多くのジャズ・プレイヤーが取り上げている佳曲。メルヘンチックだけど次第に熱を帯びてくる。
D"THREE FOR TANGO" 
BALZARのオリジナル。非常に心地よい曲で、心地よい風の下でハンモックにでも揺られているよう。
E"ZELENI HAJOVE" 
これもチェコのフォークソング。BALZARのアルコで始まる。
F"HAUNTED HEART" 
ARTHUR SCHWARTZの書いたスタンダード。アドリブでは心地よい4ビートを刻んでズンズン進む。3者の一体感もあり、良くスイングしている。BILL EVANSの"EXPLORATIONS"(JAZZ批評 158.)でも演奏されているので、参考まで。
G"INEVITABLE" 
ピアニスト・LEVICEKのオリジナル。少々観念的な匂いのする曲ではある。
H"SOME OTHER TIME" 
LEONARD BERNSTEINの曲。やはり、テーマの良し悪しっていうのは重要なポイントだ。「いいテーマにいいアドリブ」ってやつだ。

本アルバムと同一日録音の"DISCOVER WHO WE ARE"(JAZZ批評 831.)はオリジナルで固めたアルバムだったけど、これも心打つアルバムだった。本アルバムは趣を変えて、スタンダード、カバー曲、フォークソングと色彩豊かに彩ってくれた。どの曲も楽しめるけど、やはりテーマの良い@、C、F、Hのスタンダードが秀逸。
チェコと言えば、ジャズ・ベーシスト大国で、多くの名プレイヤーを輩出している。MIROSLAV VITOUS、GEORGE MRAZ、VIT SVEC、いずれもジャズの歴史に名を刻んだプレイヤーたちだ。その仲間にこのROBERT BALZARも加えたいということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2015.01.01)

試聴サイト:http://www.robertbalzar.cz/en/music/latest-album
        https://www.youtube.com/watch?v=L7yXpvlsUVo



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