独断的JAZZ批評 908.

ALEX MERCADO TRIO
このわずかな差こそ、実は大きな差なのだ
"SYMBIOSIS"
ALEX MERCADO(p), SCOTT COLLEY(b), ANTONIO SANCHEZ(ds)
2014年4月 スタジオ録音 (CONACULTA FONCA : CDFL-1614
)

今回はメキシコのピアニスト。メキシコというと僕の中では"TRIO '02"(JAZZ批評 126.)のMARK AANDERUDを思い出す。お国柄情熱的な演奏かと思いきや、リリカルな美しいピアノを弾くのでビックリしたものだ。
対して、このピアニスト・ALEX MERCADO、日本では無名に近いが、驚いたことにサイドメンにあのSCOTT COLLEYとANTONIO SANCHEZが参加しているのだ。この二人と言えば、ENRICO PIERANUNZIのニュー・アメリカン・トリオとして"STORIES"(JAZZ批評 876.)がリリースされたばかりだ。アメリカの最先端ジャズの先鋒的存在の二人がほとんど無名のピアニストとトリオを組んだというだけで話題性がある。

@"WISE" いきなり難しいリズムだ。心地よさはない。不安定感満載だけど、これが良いというファンもいるのだろう。
A"SYMBIOSIS" 
早々にCOLLEYのベース・ソロが用意されているけど、アコースティックな素晴らしい音色を披露してくれる。リリカルだけど熱っぽい演奏だ。
B"SONG FOR LUCA" 
持って回ったようなイントロからテーマで、早く主題に入ろうよという気分になってくる。最後は同じリフを繰り返し、SANCHEZにソロの機会を与えている。
C"NOTHING CHANGES" 
ここでMERCADOは高速4ビートのパッセージを難なく弾き倒してみせる。コロコロと良く動く指だ。COLLEYとSANCHEZのソロも聴きどころだ。
D"WHAT LAYS BEYOND" 
全曲がMERCADOのオリジナルということで、このあたりまで来ると段々飽きてくる。テーマもアレンジも凝り過ぎだ。
E"NONA" 
愛らしい曲だけど弾き過ぎ。間がない。COLLEYのベースを見習ってほしいものだ。
F"FREE MAN" 
G"RHAPSODY" 
COLLEYのベースが良く歌っていて躍動感が満載だ。盤石のリズム陣を従えて楽しそうにピアノも歌っている。これで良いんだよね。変に難しいことしないでシンプルに歌う!
H"FLOWING" 
最後は同じリフを繰り返し、SANCHEZがソロを執るという図式だが、これがくどいと思わせるほど繰り返される。
I"TWO DOORS" 
この曲でも同じリフが繰り返されるけど、これも同様にしつこいと思わせるほど繰り返されるのが難点だ。

ピアニストが違って、サイドメンが同じとなればどうしてもピアニストの比較をしてしまう。
PIERANUNZIのトリオはうねるように躍動していたし、心躍るワクワク感があった。対して、MERCADOのトリオはこのワクワク感が少し欠けている。
このわずかな差こそ、実は大きな差なのだ。
比較対象が世界を代表するジャズ・ピアニスト・PIERANUNZIであるので、同等の評価までは与えられないが、未だ無名に近いピアニストの演奏としてはサイドメンの力を借りて存在感をある程度は示せたのではないかと思う。
このアルバムで一番心惹かれたのはSCOTT COLLEYのベース・ワークだ。流石だね!あちこちで引っ張りだこになるわけだ。   (2014.12.05)

試聴サイト:
https://www.youtube.com/watch?v=uihlRnDaP4U
        http://www.cdbaby.com/cd/alexmercadotrioscottcoll



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