独断的JAZZ批評 907.

SHALOSH
一大ジャズ絵巻を観ているよう!
"THE BELL GARDEN"
GADI STERN(p), DANIEL BENHORIN(b), MATAN ASSAYAG(ds)
2014年1月 スタジオ録音 (HISENSE)

松山のジャズ友が教えてくれたアルバム。
最近のイスラエルのジャズ・ピアニストの活躍ぶりといったら枚挙に暇がない。今年になって紹介しただけでも、ROY ASSAF"SECOND ROW BEHIND THE PAINTER"(JAZZ批評 892.)あり、OFIR SHWARTZ"SHADES OF FISH"(JAZZ批評 843.)あり。そして、本アルバム。
いずれのピアニストも若い。ASSAF、32歳、SHWARTZ、35歳、このSTERNは年齢不明だが写真を見る限り若そうだ。20歳代だろうか?
先のOFIR SHWARTZがこのSHALOSHの日本への売り込みを相当強くプッシュしたらしい。
Hを除く全ての曲がSHALOSHのコンポーズとなっている。

@"COMPUTER CRASH" タイトル通り、コンピュータがぶっ壊れたかのよう。幾何学模様のフレーズも飛び出してなかなか面白い。やはり、最後は壊れたようだ。
A"JERUSALEM STATE OF MIND" 
街の喧騒だろうか?話し声も聞こえる。イスラエル人にとってのエルサレム。定型パターンのリズムを刻む。
B"LEAVING MAINE" 
哀愁を帯びたテーマだ。徐々に高揚感を増していくその様が良い。続くベース・ソロは太くてアコースティックな音色がとても良いし、小気味の良いドラム・ソロもグッドだ。3者のアンサンブルも見事だ。
C"BRAIN DAMAGED PUMPKIN PIE" 
ベースの定型パターンに乗ってピアノとドラムスが躍動している。演奏に躍動感とダイナミズムがあっていいね。
D"EVERYTHING PASSES, EVEN THE TREES" 
ピアノとベースが美しいテーマを奏でるその後ろでドラムスが多ビートを刻む。面白いアプローチだ。スケールの大きい荘厳な演奏が、一転して、プログレ風の軽快なリズムを刻む。心憎い演奏だ。
E"ELEPHANT" 
本アルバムを何回も聴いたけど、とても強く印象に残る曲。タイトルは「象」だ。少ない音数、効果的なパーカッション。シンセサイザーの歪んだ音色が最後のクライマックスにより効果的に演出されている。ウーン、やるねえ!
F"PLEASURE AND DISGRACE" 
変拍子。数えないで身を任せよう。ちゃんと、躍動しているところが凄い!
G"SONG FOR DANIEL" 
後半にシンセサイザーが入っている。この辺の構成力に巧みなものがあるね。ただでは終わらないという感じ。
H"GET HOME" 
このグループ、ピアノ・トリオとしては音数が少ない部類だろう。にもかかわらず、グッと惹きつけるものを持っている。ここでも、ただでは終わらず、最後にクライマックスを用意してくれているのだ。
I"SANDY" 
複雑なリズムでありながら躍動感がある。枠に嵌らない自由奔放な演奏スタイルだ。それでいて最後は盛り上がって終わる。心憎いね。
J"EULOGY"
 哀しみを帯びたテーマ。ドラムスとアルコが高揚感に彩りを添える。全てが壮大なクライマックスへと突き進んでいく。鳥肌が立った!

この若さで、この壮大な音楽。驚異だね!
単なるピアノ・トリオとは違う。変拍子あり、アブストラクトあり、プログレ風あり、シンセサイザーあり、多分、多重録音あり。一貫しているのは、枠にとらわれない自由奔放な演奏スタイルだ。そこから生まれる音楽はダイナミズムに溢れ、クライマックスに至る高揚感ありで聴く者の耳を捉えて離さないだろう。
まるで一大ジャズ絵巻を観ているようだということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.11.29)

試聴サイト:
http://shalosh.bandcamp.com/album/the-bell-garden
        
このサイトでは全ての曲がフルに試聴できる。



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