独断的JAZZ批評 896.

ANDRE CECCARELLI/JEAN-MICHEL PILC/THOMAS BRAMERIE
"TWENTY"
JEAN-MICHEL PILC(p), THOMAS BRAMERIE(b), ANDRE CECCARELLI(ds)
2013年8月 スタジオ録音 (BONSAI MUSIC : BON140201)


ANDRE CECCARELLIの名前が筆頭に来ているが、3者の共同名義というのが正しいのだろう。
CECCARELLIと言えば、何て言ってもENRICO PIERANUNZIのアルバム"LIVE IN PARIS"(JAZZ批評 324.)でのプレイをいの一番に挙げたい。ライヴならではの熱気とスリル。熱い波動が瞬時の反応を呼び起こしてスリル満点の演奏を繰り広げていた。それが13年前の話。
ピアノのPILCはスペース国立センターのエンジニアという経歴を持つ変わり種。絵画で言えば、抽象画でも油絵でも水彩画でも何でもござれという逸材で、独特の音楽観を持っている。
BRAMERIEはPILCの盟友で2006年の"NEW DREAMS"(JAZZ批評 460.)等にも参加しており、PILCとは切っても切れない間柄だ。

@"ALL BLUES" MILES DAVISが良く演奏したこの曲もPILCの手に掛かるとこんな風に仕上がる。混沌とした中に守られている秩序。
A"CRY BABY CRY"
 本アルバムの中にはリリカルな演奏がいくつかある。このトラックもそのひとつ。やけに聴き易いPILCのオリジナル。
B"ON GREEN DOLPHIN STREET" 
サクサクとしたブラシ・ワークに乗って、聞古されたスタンダードも面白くも不可思議に料理された。いかにもPILCらしい料理の仕方。
C"TWENTY"
 作曲者が3人の連名になっているから、インプロヴィゼーションかな?インプロとは思えない絶妙なインタープレイに拍手。
D"OPUS #3"
 これもインプロのようだ。CECCARELLIのドラム・ソロで始まる。その後、二人が加わり音楽を構築していく。まさに、即興の味わい。
E"NE ME QUITTE PAS" 続けて、邦題「行かないで」 シャンソンから1曲。一転、リリカルな演奏にシフトする。泣かせる!
F"OLD DEVIL MOON"
 スタンダードもPILCの手に掛かるとおどけたユーモアのある演奏になる。
G"RETURNING"
 PILCのオリジナル。絶妙なブラシと野太いベース。3者のアンサンブルがいいね。
H"THINGS ARE" 
I"STRAIGHT NO CHASER" 
「破壊と構築」の中にきちんと「秩序」が保たれている。PILCの真骨頂だ。ピアノが壊れないかと心配したりする・・・。
J"L'AUVERGNAT" 
これもシャンソンかな?美しいメロディだ。当たり前だが、一流のミュージシャンは何をやっても上手いね。美しくて、熱い。
K"SOLAR"
 締めもMILES DAVISの書いた曲から。絶妙なアンサンブルから生まれるこの躍動感が堪らない。

本アルバムでは、「破壊と構築」の中で何曲かリリカルな演奏が含まれている。尖がっているばかりではなく丸みを帯びた側面も見せてくれたのが新しい。リリカルなオリジナルに加えて、シャンソンから2曲が挿入されている。
誰にでもお勧めできるとは言わないが、以前に比べると大分、聴き易くなっている。
たまには、脳天をも刺激してくれる、こういうアルバムを聴くのもいいもんだということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.09.15)

試聴サイト : https://www.youtube.com/watch?v=DgrELwtIV00
          https://www.youtube.com/watch?v=MSym_mLwGOQ
          https://www.youtube.com/watch?v=x5pE7gPVcMw



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