FRED HERSCH TRIO
スタンダードやカバー曲ではその瑞々しさが十分伝わってくるので、これは選曲とアルバム構成の失敗かなという感じもする
"FLOATING"
FRED HERSCH(p), JOHN HEBERT(b), ERIC MCPHERSON(ds)
2014年6月リリース スタジオ録音 (PALMETTO : PM2171)
最近のFRED HERSCHはすっかり病も癒えて往年の元気を取り戻したようだ。日本にも毎年のように足を運んでくれているようだし・・・。
2012年録音の"ALIVE AT THE VANGUARD"(JAZZ批評 777.)では、完全復活を印象付ける演奏内容で、星5つを献上したのは言うまでもない。やはり、健康な体に健康な魂が宿るというか、キレがあって熱を帯びた演奏は素晴らしいものだった。
本アルバムでは2014年にニューヨークで録音されたということしか記載されていない。全10曲のうちHERSCHのオリジナルが7曲。残る3曲にスタンダードとT.
MONKの曲が挿入されている。
@"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC" 言わずと知れたスタンダード。右手と左手がバラバラに動き、交錯するようにメロディを織り上げていく。このアルバムのベスト・トラック。
A"FLOATING" タイトルように浮遊感があって、何となく捉えどころのない曲。
B"WEST VIRGINIA ROSE (FOR FLORETTE & ROSLYN)" ピアノ・ソロ。HERSCHの母と祖母に捧げた曲だという。優しさと慈しみに溢れた小品。
C"HOME FRIES (FOR JOHN HEBERT)" これはメンバーのベーシスト・HEBERTに捧げたオリジナル。グルーヴ感溢れるハッピーな演奏で、1曲でもこういう曲が入るとアルバムが締まる。
D"FAR AWAY (FOR SHIMRIT)" これはイスラエル出身のピアニストの捧げた曲だという。リリカルなバラードだが、バラードでも躍動感の欲しいところだ。
E"ARCATA (FOR ESPERANZA)" 今、話題の若手女流ベーシストでヴォーカリストのESPERANZA SPALDINGに捧げた曲。そういえば、大石学の最近作"EARTH
SONG"(JAZZ批評 863.)でもトリビュートされていたけど、それほど印象の強いミュージシャンなのだろう。
F"A SPEECH TO THE SEA (FOR MAARIA)" このアルバムのカバー写真を提供したフィンランドの美術家に捧げた曲で幻想的なバラード。
G"AUTUMN HAZE (FOR KEVIN HAYS)" 今度はジャズ・ピアニストのKEVIN HAYSに捧げた曲だ。僕がかつて"THE DREAMER"(JAZZ批評 440.)で星一つを付けたピアニストだ。冷や汗が出てくる・・・。だからというわけではないが、捉えどころのない演奏で何も面白くない。
H"IF EVER I WOULD LEAVE YOU" 美しい良い曲だ。ミュージカルの挿入歌らしい。良い曲だとHERSCHの瑞々しいピアノが冴えわたる。
I"LET'S COOL ONE" 最後はT. MONKの曲。独特の節回しを楽しげに弾いているのがいいね。
繰り返すが、2012年に録音された"ALIVE AT THE VANGUARD"(JAZZ批評 777.)は素晴らしいアルバムで、HERSCHの完全復活を強く印象付ける快作だった。
対して、本アルバムではHERSCH自身の手になるオリジナルの出来がもうひとつ良くない。誰かに捧げたまでは良いのだが、その肝心の曲とアドリブに面白みがないのが残念。一方、スタンダードやカバー曲ではその瑞々しさが十分伝わってくるので、これは選曲とアルバム構成の失敗かなという感じもする。 (2014.07.02)
試聴サイト : http://soundcolourvibration.com/2014/06/03/fred-hersch-trio-floating/
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