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| 『アイム・スティル・ヒア』(I'M STILL HERE)['24] | |||||
| 監督 ウォルター・サレス | |||||
| ウォルター・サレスの監督作を観るのは、八年前に'05年に観た『モーターサイクル・ダイアリーズ』['03]を十二年ぶりに再見して以来となる。 これまでに『セントラル・ステーション』['98]、『 ビハインド・ザ・サン』['01]、『ダーク・ウォーター』['04]、『オン・ザ・ロード』['12]と観てきているなかでも、特に想いの籠った作品であるように感じた。観賞後に掲示板に貼り出されていた資料を読むと、本作に描かれたパイヴァ家と幼い頃に親交があったそうだ。 前日に観劇した『昭和虞美人草』(作:マキノノゾミ・演出:西川信廣)は、1973年。本作は、1970年のリオデジャネイロを描いていて、どちらにも共に『クリムゾン・キングの宮殿』が出て来ていた。ロックの時代なのだ。そして、両作ともに新自由主義の名のもとに力ある者が行う遣りたい放題を容認する風潮の広がりのなかで国家主義・権力主義に迎合する輩がマジョリティになりつつある現況を憂えている作り手の思いがひしひしと伝わってくるようなところがあった。 当時、日本と違って軍事政権下にあったわけだから、国家権力の横暴度も、その暴力性において比較にならない。敗戦前の日本における特高や憲兵隊さながらの“国家体制維持を名目にした拷問や虐殺”が横行していた。だが、日本でも大川原化工機事件や入管施設でのウィシュマ死亡事件が起こったりするようになってきているのだから、安閑とはしていられない状況が訪れている気がする。 驚いたのは、劇場の屋外掲示板にあった新聞記事に記されていた母娘共演の話題だった。1970年リオデジャネイロ、1996年サンパウロでのエウニセ・パイヴァを演じたフェルナンダ・トーレスと、2014年サンパウロでの認知症の彼女を演じたフェルナンダ・モンテネグロは実の親子だとのことで、『セントラル・ステーション』でドーラを演じた彼女の九十五歳での出演に感心した。 | |||||
| by ヤマ '25.11.26. キネマM | |||||
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