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| 『じゃりン子チエ』['81] | |||||
| 監督 高畑勲 | |||||
| クレヨンしんちゃんもちびまる子ちゃんも妙にひねていて好きじゃないのだが、真っ直ぐなチエは好きで、連載時に漫画アクションでも時々読んでいた覚えがある。亡き高畑勲が劇場版映画を仕上げていて、YouTubeで限定公開していると知って観ることにした。 劇中でチエ(声:中山千夏)が母ヨシ江(声:三林京子)に連れられて観に行く映画が『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』['67]で、実写フィルムがそのまま取り込まれていて驚いた。されば、舞台設定は1967年ということになるが、併せて看板が映し出されていた『風と共に去りぬ』['39]のリバイバル公開は、聞くところによると世界初の70ミリ版でのものだったらしい。ミニラは観ていてもスカーレット・オハラにはまだ出会っていなかったが、同時代を知る僕の感覚からも、まだまだ子供に酒を飲ませる大人が普通にいたような気がする。僕自身が幼時に覚えのある体験だ。 チエの担任教師である花井(声:桂三枝)の父(声:笑福亭仁鶴)がテツ(声:西川のりお)の恩師で、彼がチエに酒を勧めるのを「無茶ですよ、チエちゃんはまだ子供ですよ」と止めようとした息子に「バカタレ、お前みたいな教科書通りの教育で、この異常な一家を立ち直らせられると思うとんのか」と一喝する場面に笑った。 同日に観た『平場の月』['25]には、自転車の二人乗りを映す場面があるのだが、エンドロールで道交法違反の二人乗り撮影についてのエクスキューズがクレジットされ、なんとも窮屈な時代になっていると改めて思った。すると旧知の映友が「全編に乱暴なユーモアが散りばめられた痛快作ですが、ところどころで大人たちのシビアな芝居も盛り込まれていて、胸を突かれます。特に、ヨシエの「一人で生きていける、なんて思うてたら、辛抱せなあかん時に辛抱でけんようになることもあるんよ」というセリフにはドキリとします。バクチ屋のおっちゃんの身の上話も哀しいですよね。」とのコメントを寄せてくれた。 彼が言うように、大人たちも、猫さえもが、ツッパリとグダグダの両面を殊更の衒いもなく見せていて、面倒見とお節介の境界などものともしない直情さが笑える映画だった気がする。そういうものが相まっての“頭が上がらない”であって、単に地位や力による序列などではないわけだ。猫ですら、アントニオJr.(声:横山やすし)への小鉄(声:西川きよし)の臨み方など、任侠映画さながらだった。'80年代作品とはとても思えない映画だったのは、スマートさやオシャレが持て囃され始めた時流への反骨があったからのような気がする。 | |||||
| by ヤマ '25.11.24. YouTube配信動画 | |||||
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