映像の世紀バタフライエフェクト「運命の恋人たち」
https://www.nhk.jp/p/ts/9N81M92LXV/episode/te/RPL3NP25QP/
「映像の世紀」シリーズ

 現政権の荒井元内閣総理大臣秘書官の大暴言を受けて制作されたと思しき、実にタイムリーで核心をついた作品に大いに感心した。敢えてウクライナ戦争による地雷被害で両足を失った女性との結婚から映し出したのは、時宜を訴えたからに違いない気がした。

 十年前に観たダイアナ』の映画日誌ダイアナは、奇しくもマリリン・モンローと同じ享年36歳だったわけで、エルトン・ジョンが『さよなら、ノーマ・ジーン』との題名だった楽曲を『キャンドル・イン・ザ・ウィンド~さよなら、英国の薔薇~』に変えて葬送したように、本作を観ると、ダイアナがマリリン同様に、あまりに突出していたがゆえに幸を得られなかった女性のように感じられた。アメリカン・ビューティの名を持つ薔薇となったマリリンにも匹敵する女性として、英国の薔薇というタイトルが付けられたのだろう。と記した部分を資料映像で見せてくれていた。

 そこでは、イギリスにおける同性婚の正規化にダイアナの支持が大きく影響を与えていること、法制化された同性パートナーシップ制度【2005年】による第1号カップルがエルトン・ジョンであることに加えて、ダイアナがシンパシーを寄せていたマリリンの生涯がコンパクトに綴られていた。

 そして、マリリンのジョー・ディマジオとの結婚・離婚が注目を浴びていた頃に、公民権法制定にも影響を及ぼしたらしいラビング夫妻の結婚が注目されていたことが併せて語られていた。六年前に観たラビング 愛という名前のふたりが描いていた夫妻の闘った異人種間結婚禁止法に対する連邦最高裁での違憲判決を援用することで、アメリカでの同性婚が認められるようになったのだそうだ。婚姻の自由において人種も性別も関係ないというわけだ。イギリスに遅れること十年、2015年のことだから、2017年になっての『ラビング』の映画化には、この連邦最高裁判決が影響を及ぼしているのだろう。

 当時、地元紙から依頼された『ラビング』の紹介記事の末尾に人種的優性やレイシズムを唱える動機自体は間違いではないと考えている確信犯たちが今なお絶えることがないのは何故なのだろうと想わずにいられない。そういう人たちが事あるごとに口にする「守る」ということは何なのか、家族を守るということはどういうことなのかを改めて考えてみる契機になるような時宜を得た二本立てだと綴ったことを同性婚に重ねて思い起こした。
by ヤマ

'23. 3.16. NHKプラス配信動画



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