『サボテン・ブラザース』(!Three Amigos!)['86]
監督 ジョン・ランディス

 仲間うちでの定例合評会で取り上げられたニッポン無責任時代』『君も出世ができるについて昼に談義を交わしたことから、オトボケ西部劇ミュージカルと思しき作品として本作を観てみたのだが、さっぱり笑えず、苦笑した。日米で笑いのツボが違うということなのかもしれないが、この「マグニフィセント・セブン」ならぬ「スリー・アミーゴス」の一体どこが面白いのだろう。楽曲も然程のことなかったし、これならブルース・ブラザース['80]が余程いいと思った。

 だいたいスティーヴ・マーティン主演の映画で、面白いと思ったものに僕は出会ったことがない。例外は花嫁のパパ['91]のみだが、その功績は、専らナンシー・メイヤーズだという気がしている。本作の舞台は、1916年のメキシコだが、これも一応ジャンル的には西部劇の範疇に入るのだろうかなどと言っていたら、映友が「こんな記事があったよ。」と教えてくれた。

 そこで教えてもらった、映画活動家/放送作家だという肩書の松崎まことによる『サボテン・ブラザース』が愛される理由を楽しみにして読んでみたのだが、本作の人気が高かった理由のまず一つは、物語の構造ときて、がっかりした。知りたかったのは、それをコメディとしてどう活かしているかというところだったからだ。指摘の点から言えば、ラオール・ウォルシュ監督の不死身の保安官['58]のほうが遥かに面白かった。

 更に加えて日本の観客が一番お手上げになる、英語での言葉遊びのギャグなどよりも、体を張ったギャグの方が、際立つ仕掛けとも書いてあったが、そこについては最初のところで原因として繰り返し言及されたのが、文化的な差異による“笑い”の違い。その説明には、日本を代表する喜劇映画シリーズ『男はつらいよ』が、例として挙げられるパターンが多かった。いわく、日本的な人情風味が満載の寅さん映画を、仮に欧米で字幕付きで上映しても、ウケはしないだろうと。“アメリカン・コメディ”が日本でウケないのも、それと同じようなことだと。と指摘していた点からすると、ポイントが少々ずれているような気がした。

 肝心なのは、駄洒落などの言葉遊びの部分よりも“文化的な差異による笑いの違い”であって、同じ体を張ったギャグでも、その張り方が違って笑えたり笑えなかったりするということなのだから、そのことを踏まえた考察を読みたく思った。例えば、パイ投げや西部劇によくある酒場での乱闘などが始まると、あちらでは笑いが起こるのではないかと思うが、日本では、その可笑しさに反応できる人は少なかろうと僕は感じている。そういった文化的差異を越えて本作は日本でも「愛される」1本となったということであれば、その理由は何だったのだろう。
by ヤマ

'23. 7.27. BSプレミアム録画



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