『美しすぎる裸婦』(Strangers Of Patience)['18]
『不倫する裸体』(Vernost)['19]
監督・脚本 ウラジミール・アレニコフ
監督 ニギーナ・サイフルラーエワ

 ひと頃かなり耳目を集めるようになっていたソビエト映画だが、連邦崩壊以降、ロシア映画を観る機会には余り恵まれなくなった気がする。アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の父、帰るを観たのは、もう十八年も前のことになる。そのようななか、思い掛けなくも劇場未公開作のロシア映画を続けて観ることができた。

 先に観た『美しすぎる裸婦』は、モントリオール世界映画祭(最優秀女優賞)受賞、ソチ国際映画祭(監督賞・主演女優賞)受賞の話題作!!芸術家に監禁された、美しい聾唖の女-芸術とエロスが交錯する官能◎ポーランド出身でワルシャワ演劇アカデミーに在籍中の現役学生・主演女優マジャ・ゾパ! フォトジェニックで少女のような可憐さを持つ女優Mijaが、一糸まとわぬ姿に!!体当たりの演技が絶賛され、数々の映画祭で主演女優賞受賞!◎モントリオール世界映画祭(最優秀女優賞)受賞、ソチ国際映画祭(監督賞・主演女優賞)受賞 サンパウロ国際映画祭正式出品との触れ込みに惹かれて視聴したものだが、かなりのトンデモ映画だったように思う。

 五年前のロシア映画には、アメリカ人作家トーマス・ウルフの言葉を引用したり、食卓に創作系の握り寿司を並べたり、欧州映画のショットを称えたり、昼顔ほかと思しきスティル写真のドヌーヴを眺めながら彼女は今も美しい そうだろ?と愛犬の大型犬に話し掛けたりする初老の芸術写真家アンドレイ(コンスタンチン・ラヴロネンコ)の妄執を描く作品があったのか、と大いに感心した。更には、日本刀や着物が現れ、ベルメールによるウニカ・チュルンの緊縛写真もどきのショットも現れた。そして、彼が教会を訪ねた際の聖職者との芸術談義に窺えた危うさのスレスレ感と物語の結末に驚いた。

 翌日に観た『不倫する裸体』は、前日の『美しすぎる裸婦』の流れで上がって来たと思しき映画だ。舞台俳優の夫セルゲイ(アレクサンドル・パル)が共演女優と遣り取りしている舞台上の台詞の記された携帯メールを垣間見て浮気をしていると思い込み、腹いせに不用意で無防備な浮気をしたことによって、とんでもない目に合う婦人科医レーナ・パンフィロヴィアの話だった。彼女を演じていたエフゲニア・グロモヴァの風情になかなか味があって、陳腐な話をスリリングに見せてくれていたように思う。行きずりの相手が思い掛けなくも担当妊婦の夫だったわけだが、彼ののぼせ様が尋常ではなく、躱すのに難儀しているレーナが憐れなほどだった。

 触れ込みにあった★本国ロシアで大ヒット!R-18作品で過去最高の興行成績を記録!の真偽のほどは定かではないが、夫婦関係の綾の見せ方に、ゆらめきとデリカシーがあって、それなりのものを宿していたように思う。最後にレーナが一人で歩いていた姿に対して思うところは、観る者によって様々だろうが、辞めてきた病院を経営する医師の元を訪ねるのが最も穏当な気がした。だが、彼女は、そうはしないのだろう。
by ヤマ

'23. 2.27,28. GYAO!配信動画



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