『無法の王者 ジェシイ・ジェイムス』(The True Story Of Jesse James)['57]
『追跡』(Pursued)['47]
監督 ニコラス・レイ
監督 ラオール・ウォルシュ

 執拗に追われる男の陰で女性が苦悩を抱える姿が相通じる取り合わせとなる二作品を続けて観た。先に観た『無法の王者 ジェシイ・ジェイムス』は、今世紀になってから撮られたジェシー・ジェームズの暗殺』['07]の日誌にも記してあるように、数々の映画で既に観知っているジェシー(ロバート・ワグナー)の物語ということもあるだろうが、1時間半余のコンパクトさで見渡すと、いかにもダイジェストと言うか、いささか大味に感じられるところが強かった。

 '57年作品だから、ブラッド・ピットが彼を演じた『ジェシー・ジェームズの暗殺』のちょうど半世紀前の映画になるわけで、ジェシーがフォード兄弟の弟に背中から撃たれて死んだ1882年から、ちょうど3四半世紀経った時点での作品となる。ヒーローにもヒールにも描いていない立ち位置には納得感があるものの、いかんせん魅力に乏しいジェシー像だったような気がする。原題にある“True Story”が妙に枷となり、仇となっている気がした。

 繰り返し映し出されていた、ジェシーとジー(ホープ・ラング)の暮らす家に掛けてあった、少々皮肉にも映る「Home Sweet Home」の額を、最初に印象深く観たジェイムズ=ヤンガー・ギャング団映画は何だったかな、などと思いながら観た。

 ニコラス・レイ贔屓の映友女性がブログに書いていた「牧師立ち合い、川でのジェシイと妻の洗礼がおもしろい。」で思い出したが、牧師役のジョン・キャラダインが地獄への道['39]での暗殺者だった。

 ブログにあった「食堂のおばさんの借金を払ってあげる寛大さ」という部分に関しては、本作では、ミネソタ大強盗団でジェシー以上に焦点の当たっていたコール・ヤンガーの策にまんまと乗せられ、コール(アラン・ヘイル・Jr)に出し抜かれたくないというジェシーの対抗心の現れとして描かれていた気がする。言うなれば、ヒロイックに伝承されている部分に釘を刺す描出であるのと同時に、頭の切れる策士コールを印象づけていた気がする。


 翌日観た『追跡』は、何とも奇妙な西部劇だった。幼時に受けた精神的な傷害によって記憶欠落と不安の強迫に苛まれている主人公のジェブ・ランド(ロバート・ミッチャム)は、彼自身には何の罪もないどころか被害者なのだが、カラム兄妹にとっては結果的に、まさに疫病神と言ってもいいような存在だという気がした。

 戦後間もない製作時期からして戦争後遺症的なものをモチーフにしているのかと思いきや、観進めていくに従って、そうではない因縁ものであることが明らかになってきて、意外だった。また、西部劇に南北戦争ではなく、米西戦争の話が出てくるのは、非常に珍しいとも思った。

 そして、ランド家とカラム家の確執に最も罪深く関与しているのは、アダム(ジョン・ロドニー)とソー(テレサ・ライト)の母(ジュディス・アンダーソン)以上に、彼女の義兄たるグラント・カラム検事(ディーン・ジャガー)だという気がしてならなかった。ランド家抹殺を公言して憚らないどころか、執拗にジェブを「追跡」する彼が唆さなければ、アダムもプレンティスも命を落とす羽目にはならなかったような気がする。なんとも哀れなジェブとソーであった。
by ヤマ

'22.10. 6. BSプレミアム録画
'22.10. 7. BSプレミアム録画



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