『ショーシャンクの空に』(The Shawshank Redemption)['94]
監督・脚本 フランク・ダラボン

 刑務所つながりで言えば、三日前に観たばかりのアルカトラズ刑務所の異名をタイトルにしたザ・ロックとも被る作品で、1995年度のマイベストテンにも選出しながら、映画日誌を残していなかった秀作を二十六年ぶりに再見した。

 服役五十年で仮釈放を受け、世間に出ることに怯えつつ出所したものの、居場所のなさに自死するほかなかった図書係の老服役囚(ジェームズ・ホイットモア)や、彼が梁に遺したブルックス、ここにありの傍にレッドもまたと刻んで、同じ心境に追いやられていた調達屋(モーガン・フリーマン)の服した四十年よりは短いけれども、驚異的な粘り強さと周到さによって脱獄を果たした元青年銀行副頭取アンディ・デュフレーン(ティム・ロビンス)が、小さなロックハンマーで壁に希望を穿ち続けた十九年よりは、ずっと長い歳月を空けてのスクリーン観賞となった。

 仮釈放申請をようやく叶えて出所した後と思しきレッドの語りにあった終身刑は人を廃人にする刑だとの言葉が重く響いてきたのは、二年前に観たドキュメンタリー映画Lifers ライファーズ 終身刑を超えてを想起したからかもしれない。ある意味、死刑よりも過酷だというのも尤もな話だと思う。

 セックスシンボルのポスターガールが、'40年代のリタ・ヘイワースからマリリン・モンロー(『七年目の浮気』['55])を経てラクウェル・ウェルチ(『恐竜100万年』['66])に至る時代の刑務所とはいえ、人としての尊厳が徹底的に奪われ、損なわれる境遇の凄まじさに恐れ入るとともに、それに抗い、不運がこれほど恐ろしいものとは…と漏らしつつも、“内心の自由”を保ち続け、いかなる境遇にあろうとも超人的な意志と才覚の力で切り抜ける姿が圧巻だった。そして、書物という人類の叡智に対する偏愛と黒曜石の下に埋めた空き缶の設えに、いかにもスティーヴン・キング趣味を感じたが、原作小説『刑務所のリタ・ヘイワース』にもある場面なのだろうか。

 重い主題を湛えながら、意外とユーモラスな場面の多いところが実に好い。このような筋立ての作品で、よくもこれだけニンマリできる場面を挿し込んだものだと大いに感心させられる。最初のほうの、調達屋にリタ・ヘイワースを注文して、しっかりポスターが来る場面にしても、入所後2年目のビール事件の場面にしても、各地の刑務官の納税申告書の作成時期に合わせて野球の交流試合が開催されるようになったという場面にしても、図書室実現場面の描き方にしても、囚人仲間との食事時の会話にしても、けっこうあちらこちらにあって、やはりエンタメ映画はこうでなければいけないと改めて思った。
by ヤマ

'22. 6.27. あたご劇場



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